第98話 魔法陣という概念をぶち壊す輩はこいつですっ!
「さてと…確か、クズ転生者の脳を使って、魔法陣発生装置を作ったんだっけか?」
「そうだよっ!そのためにお前を呼んだんだ!勝手に名付けなんかさせやがってっ!なんだ!その格好はっ!俺の顔で、イカれた格好してんじゃねーよっ!」
俺は、好き勝手にやるのは好きだが、好き勝手にされるのは許容できない男なのだ。
「…ってか、これを使いこなすために俺を呼んだんじゃねーのか?」
「まぁ、そうなんだが…」
そう、俺はもちろん、分身体を含めて俺の血肉を分け与えた眷属達が動いたら、天王神一派に俺達の動きを読まれてしまう。
だから、他者の脳髄と肉体を使って、魔法を行使できるように装置を作ったのだ。
天王神一派には、認識阻害も通じない。
通じていれば、今頃、北半球の世界に戻っている。
閻魔とも連絡がついている
…はずなのだ。
つか、北半球の世界に戻れないのはともかく、地獄との連絡が取れないのは極めて予想外だ。
地獄は、西洋の悪魔界、神話の冥界、全てをつなげて、今や死後の世界、闇の世界は統一してあるのだ。
異世界に来たからといって、なくなるはずはないのだ。
現に、北半球では浮遊要塞、各種族の住処、集めた資源諸々、必要な物資は地獄で管理、建設が行われ、必要な時に必要なだけ地上と地獄を行き来できるようにしてある。
南半球のここでもそうだ。
この世界の鉱石は、ありったけ地獄送りにしている。
それからだ。
連絡がつかなくなったのは…。
抜け道として、地獄経由で北半球に戻れた可能性だってある。
それができないから魔法陣頼みになったのだ。
「で?どうなんだ?この装置なら、転移魔法陣を構築できるんじゃないか?」
「ま、まぁ、出来なくはない…かも」
「なんだ?いやに歯切れが悪いな…お前」
ジンがヤレヤレといった顔で、俺を見つめる。
「まったく…いつも適当に魔法陣を作り出す奴はこれだから…」
「なんだよ…」
「いや、もういい…」
げっ!
元分身体に諦められたし…。
こんなやり取りをしているうちに、イノリ達5人は、眠りこけている。
「いい気なもんだ…」
「いや、こいつらは、俺の睡眠魔法で眠らせてある」
「い、いつの間に…」
「ん?装置に近づく動きをした時に、隠蔽魔法と睡眠魔法を掛け合わせた魔法陣を、全員の足元に滑り込ませておいた」
「………」
そうだった…こいつは、魔法陣単体を、自由に動かせるんだった。
念じた魔法陣を具現化させ、任意の場所に移動させらる。
大きさも規模も任意。
敵の体に魔法陣を貼り付け、火炎魔法をゼロ距離で放つ事だって、追尾して仕留める事だってできる頭のおかしい奴。
「今、なんか失礼な事を考えてなかったか?」
「いや、そんな事はないっ!」
こいつに、読心能力がなくて助かった。
「で、みんなを眠らせたって事は、聞かれたくない内容があるからだろ?」
「まぁ、そうなんだが…」
そこからのジンは、真剣な眼差しで俺を見つめ、深刻そうな雰囲気で語り始めるのだった。
…がっ!
ホストみたいな格好で真剣な眼差しを向けられても、俺はノーマルだから、何の感慨もないのだが?
いやまて、勘違いするなよ?
俺は、ホストを貶めているつもりはないからな?
ホストみたいと言っただけで、ホストの服装やセンスにケチをつけるつもりはない。
ホストなら、すべてが一流だからだ。
だが、ジンは違う。
白衣が黒衣になり、その上着には、丸や三角、四角に六角…そんな魔法陣が所狭しと黒衣を埋め尽くしているのだ。
服装だけなら、ぶっちゃけ、ホスト寄りと言うより、お笑い寄りだ。
(あー…目がチカチカする)
これが俺の本音である。
☆☆☆
「いやぁ、確かな事はわからんが、地獄に原神がいるみたいだぞ?」
「え?」
「俺の魔法陣は、原神には効かない。認識された時点で、魔法陣は破棄されるんだ。お前に魔法陣による遠隔攻撃が効かないのも、体内に原神の神格を保有しているからだ」
「基本的にはな…まぁ、お前に大抵の攻撃が通じないのを差し引いても…だ」
(まてまて…!遠隔攻撃が効かない??)
こいつ…俺で何かの実験してたんかよっ!!
俺に、原神としての自覚はない。
体や衣服を形成している物すべてが生き物であり、その気になれば、細胞1つ1つが意思を持って行動できる。
…って、何だか同じ事を何度もしている気がするので、話を進める。
ふむ。
「で、どんな原神なんだ?」
これは気になる…。
「いや、それがわからない。探知魔法陣を隠蔽魔法で隠し、密かに地獄に潜らせていたんだが、地獄に行くつく前に、ことごとく無効化されている。地獄からは、こちらの動きが丸見えらしいな」
「原神は、天王神一派だけじゃなかったのか?」
地獄に原神が存在するなんて情報は入っていない。
地獄の総括は閻魔のはずだ。
俺は地獄の支配権限を持っているだけ。
「いや、新しく生まれた原神だな…これは…」
「新しく??原神って、そんなにポンポン生まれるものなのか?」
ギロッ
「お前なぁ、地獄と悪魔界と冥界を一緒くたにして、闇の世界を統一したのを忘れたのか?」
「いや、それが何か?」
「はぁぁぁ…わかってないな。原神は、世界を司る神の頂点!闇の世界が統一された今、闇世界は一つの世界としてカウントされているんだよっ!」
「で、闇世界に原神が新たに生まれたと?」
「そうなる…」
俺のせいかいっ!
「ま、邪神に死神、その原神の資格を持ったお前なら、闇世界の原神も何とかできるだろうが、地獄に行く手段が、まだ構築されていない。これは、極めて稀な事例だから、お前以外には教えられなかったんだ」
「ちなみに、全員で地獄に突っ込んだら、どうなる?」
「全員、地獄に行き着く前に灰になるな…極めて好戦的で、闇世界を現世に甦らせ、全異世界を蹂躙するつもりだな…やつは…」
魔法陣が破棄されてるとか言いながら、ずいぶんと闇世界の情報を持っているじゃないか…。
「闇世界について、ずいぶんと詳しいな…」
「そりゃあ、隠蔽魔法を付与した探索魔法陣軍団の1万人は破棄されたからな…断片的な情報をまてめると、こうなってたって話だ」
いつの間に…。
魔法陣職人侮りがたし…。
って、まてまてまてまてっ!!
魔法陣軍団って何??
1万人って何??
「おいっ!ちょっと詳しく話を…」
「そろそろ起こすか…」
「聞けよっ!!」
スルッスルッスルッスルッスルッ…。
手に持った魔法陣を、まるでフリスビーのように全員に投げつけ、足元に展開する。
ただ1人、ミーコだけには、顔面ヒットしていた。
「何をするにゃー!!」
「えと…魔法陣って、投げつけられるものだっけ?」
「普通は無理だろうな…だが、俺は魔法陣の擬人化にも成功している。心配はないっ!」
は?魔法陣の擬人化って何??
それが軍団、1万人って表現の元ネタかいっ!!
☆☆☆
「えー。今わかった事だが、地獄との連絡がつかないのは、閻魔が何者かによって身動きが取れないでいるかららしい」
「「「「では、地獄に身の程知らずの敵がいると?」」」」
「いや、敵かどうかはわからないが、地獄に侵入者がいる事は間違いない!閻魔の事、地獄の住人の事、次元空間から廃棄場に流れている資材、素材諸々、侵入者を排除し、元の状態に戻さなければ、ゆくゆくは、北半球での活動が困難になるだろう」
「「「「「………」」」」」
ここで地獄に新たな原神がいるとは言えない。
連れていくのも、おそらくはイノリとジンだけ。
あとは、悪いが死なせる未来が見えているのに、連れていくわけにはいかない。
そこでジンが、各自に100多面体のキューブを手渡していく。
「ヤバい敵が地獄からきたら、迷わず使え!殺傷能力は皆無だが、足止めにはなる」
「「「なんだろう?これ」」」
「敵に投げつけたら、自動的に、見た目は防御結界のような魔法陣で作られた球体が敵を包む。まぁ、足止め程度にはちょうどいい」
「あの…その威力は?」
「敵にも能力の個体差があるが、その球体に囚われた敵が、イライラする魔法がランダムで放射されるようになる…まぁ、ある意味、精神攻撃だな…」
精神攻撃魔法の魔法陣??
なんじゃそら…。
「まぁ、たとえば、火に耐性のある魔物には、氷属性の魔法をダメージ付きで掠らせるとか、黒板を爪で引っ掻いたような気に触る音が延々と流れるとかだな…敵の能力に合わせて威力も痛い、熱い、イライラする!ってレベルに自動調整される」
「「「………」」」
いやらしいっ!なんて実にいやらしい魔法陣の球体だっ!!
精神攻撃とは名ばかりの、嫌がらせレベルの魔法陣球体だ。
(こいつの常識外れた魔法陣制作には、俺でもついていけない…)
「で、どうやって地獄に潜入するんだ?魔法陣は無効化されるんだろ?」
「そこでだ!お前の作った《《魔法陣作成装置を、擬人化して凸撃させる」
「「「「「は?今なんて??」」」」」
意味がわからない…。
「だから、魔法陣作成装置を擬人化して…」
「魔法陣の擬人化って何??」
これは聞いておかなくてはならないだろう。
戦艦や戦闘機を擬人化した例はいくつもある。
だが、魔法陣は、いわば魔法を行使するための触媒だ。
つまり、どこまで行っても、図柄であり、紋様なのだ。
つまり、擬人化する要素が皆無な代物なのだ。
「え?もちろん、魔法陣が人型になって、無効化能力をぶち破るんだよ」
と、何言ってんだこいつ…みたいな反応で、想像すらできない発言をバンバンしてくる。
「でだ。魔法陣装置は、元々はクズ転生者、突破するだけなら、あとは砕けようが魂が地獄に落ちようが、なんら問題はない…要は、阻害されている地獄への侵入さえできれば、あとは敵を倒して帰還するだけだ。簡単だろ?」
「「「「いやいやいやいや」」」」
お前がサラッと説明する内容は、みんなにとって、理解不能な内容ばかりだからなっ!
しかし、地獄に行かなければ話が進まないのも事実。
こうして、ジンの発案は有無を言わせず、全面的に採用され、実行に移す事となった。
『ワタクシ、マホウジンマシン1号ト、モウシマス、ミジカイツキアイデスガ、ヨロシクオネガイシマス』
魔法陣マシン自身は、地獄への突破が目的であり、その後は命の保証がない事を自覚している。
「みんな、しゃべるからと言って、同情は必要ないぞ?所詮は魔法陣だ…魔法を行使したら消えるのが魔法陣…遠慮はいらない」
こ、こいつ…。
魔法陣に人格を持たせても、スタンスは変りゃしねーよっ!!
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