第2話 鈴虫の鳴き声
俺が入っている部活は文化部。【部活として活動したいが人が集まらない】そんな人達が集まった部活。なので、それぞれが自分のやりたいことを自由に
「私もう帰るけど、フー君はどうする?」
窓を眺めている俺に
フー君とは俺のあだ名である。本名、【
「俺は残るよ。妹に待ってるよう言われてるから」
「そっか。じゃあまた明日ね」
時計を見ると6時近い時間になっており、風の音よりも鈴虫の鳴き声のほうがよく聞こえていた。特にすることもなくスマホを眺めていると、妹からメッセージが届いた。
[少し送れる]
遅れるを送れると誤字してるのを察した。
「先に準備して待っとくか」
俺は椅子から立ち上がり、自分の荷物をまとめていく。とは言ったものの、カバンを机に置くのと、パーカーを着るだけの簡単な作業しかないが。
風に吹かれたカーテンが目に入り、窓を閉めるのを忘れていたことに気づく。これを閉め忘れると先生に怒られるので気づけて良かった。
「あれ?
家に帰ったと思われた由奈だったが、反対側の教室に姿が見えた。この学校は【コ】の字型の設計で内側に向かって設置されている窓からは、反対側の教室が見えるようになっている。
「誰かと話しているのか?」
よく見るともう一人居ることに気が付いた。会話は聞こえない。聞こえるのは鈴虫の鳴き声だけ。正直、鈴虫の鳴き声が夏のセミくらいにうっとうしく思えてきた。
その時だった。
「えっ…」
俺は思わず声が漏れる。俺の目の前ではないが、しっかりと現実としてその光景は目に入る。心臓の音が周りの環境音よりも大きく鼓動する。遠くから見ても分かる。話し相手が生徒会長だったことも、二人がキスをしていたことも。多分これは見てはいけないものだと思う。日が暮れて、電気がついている教室の中はより鮮明に見えてくる。こちらもまた、教室の電気はついている。俺は気づいて、すぐさま電気を消した。急いで動いたせいか、俺はスマホを床に落とした。だが今は、それどころではない。もう一度向かい側の教室を見る。
「まじか…」
電気が消えていた。単に二人はもう帰ったのか、あるいは、こちらが見ていることに気が付いたか。真相は
自分が失恋をしたということを。
そのままため息をこぼし、壁にそりながら床に座り込む。
「案外、涙は出ないもんなんだな…」
斜め上を見つめも、落としたスマホの明かりがやや天井を明るく照らしている。ただそれだけだった。聞こえているはずの鈴虫の鳴き声も、俺にはもう届いてない。
コイワズライ アメはいつもレモン味 @Kenmu
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