コイワズライ

アメはいつもレモン味

第1話 男女の友情

かすかに涼しい風が窓からゆったりと流れてくる。部活動の掛け声や、吹奏楽の音が校内に響く。いつの間にかセミの鳴き声も聞こえない。

「涼しくなってきたね」

そう呟くのは、俺の前に座っている1人の女の子【式森しきもり 由奈ゆな】。サラサラな黒いロングヘアに、透き通った焦げ茶の瞳。幼なじみでもあり、同じ部員である。

「もう、夏も終わりかぁ」

特に話題も無く、またも風の音だけが部室にささやかな音色を奏でる。

今この部室に居るのは、俺と由奈の2人のみ。他にもメンバーは居るが週に一度だけこの時間が訪れる。

俺はこの時間が嫌いじゃない。むしろ、この時間がもう少し長く続いてくれればと思う。なぜなら、俺は由奈が好きだから。一度告白をし思いを告げたが、断られてしまった。今は誰とも付き合う気は無いらしい。

それで終わりなら良かった。だか、

『今まで通り、なおかつ、もっと深い関係。親友とかどう?』と言われた。

嫌われるよりかはマシだと思い承諾した。それから特にいつもと変わらず、俺たちは何事もなく日常を過ごしてきた。


【男女の友情】


それが果たして本当に存在するのかと思うと、正直無くはないと思う。ただ、それはあくまで表面上だけ。友情という一線を越えようと思った瞬間があれば、それは、【恋】に変わると思う。

由奈に告白をしてからもう一年が経つ。未だに俺は、由奈に【恋】をしている。届かない、届けられない思いを秘めて。

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