唯我独尊 この理不尽な世界に宣戦布告、俺が世界を統べる。

@kamui_sgu

第1話


雨が降り頻る中、暗い森を突き進む女性がいた。その女性はフードに身を隠し、小さな赤子を持ってなにかに追われているようだった。

 

「この子だけは絶対に守る。この子はあの人との、、、」

 

そういうと女は大きな魔法陣を展開させた、あたりは一瞬昼間のような光に包まれた。


「これだけは使いたくなかったのに」

 

その刹那の間に女性が抱えていた赤子は消えていた。

 

「愛しているわ」

 

馬のような生き物にまたがった人型の何かは、勢いを止めることなく女性を追った。


――――――――――――――――――――――――


なにやら悪い夢を見ていた気がする。たがよく思い出せない。

 

とても心地が悪い、だがなぜか暖かい気持ちになる。

そして、なぜ俺は泣いているのだろうか。

 

「レックス起きなさーい、いつまで寝ているのー?」

 

俺は涙を拭った。

 

「ごめん、かあさん今行くよ」

 

貧困街の住人の朝は早い。

 

その日暮らしで、その日食べるものは自分で調達しなければならない。

 

川での釣りや森でのキノコ探し、力がある男ならば野獣を狩るものもいる、三者三様の暮らしをする。

 

自由が売りの貧困街だ。

 

俺の役割は森に行って山菜やキノコを取ること。

 

「お兄ちゃん! おはよ!」

 

そう言って俺の上に飛び乗って来たのはアイリス、こいつは俺の妹だ。

 

「今日はなにする?! なにする!?」

 

アイリスは目を光り輝かせこちらに期待の眼差しを向けている。

 

「今日はグンじいちゃんの所へはいかないぞー」

 

いきたい、いきたいと拗ね俺の頭をたたいてくるわがままな妹。

 

グンじいとは、この貧困街で1番頭がいいと言われている、穏やかな老人のことだ。いつもかあさんのお願いで食べ物を持っていくと、常識やこの世界のこと、言語について教えてくれる。

 

「だって昨日も一昨日も行ったじゃないか、グンじいにそんな迷惑かけるわけにいかないだろ?」

 

「ぶー、お兄ちゃんのいじわる」

 

頬を膨らませ、涙目でつんつんしてくる。


かわいい。

 

常々思っているのだが、我が妹は俺にあまり似ていない、。


髪の色も俺は黒、アイリスは白銀で、目の色も違う。

 

そしてなにより将来はとても美人になるであろう顔つきをしている。

 

今俺は11で、アイリスは10歳になる。

 

年子ということもあり、妹でもあり、友達でもある存在だ。

 

そう考えている間もアイリスは駄々をこね俺の上を離れる気配がない。

 

「もー仕方ないな、わかったよ」

 

待ってましたと言わんばかりに


「ほんと!? 約束だよ!? やったぁ!お兄ちゃん大好き!!」

 

「でも今日のやることを終わらせてからだからなー」

 

アイリスは、わかってると言い残し、足早に外出の準備をしに行った。

 

俺はこの日常が好きだ、いつもの変わらない、決して


楽とは言えない暮らしだが、それなりに充実している。

 

だが、俺には野望ある、それを叶えるために日々精進なのだ。

 

突然コンコンと窓から音がした。

 

「今日も来たのかあいつ」

 

これも毎朝の恒例となっている。

 

「しょうぶだぁーーー」

 

そう、いつも俺に挑戦してくるバカトリオが懲りずにまた来たようだ。

 

「はぁー、仕方ない」

 

めんどくさがってはいるもののいい運動になるのだ、決して楽しみなどではない。仕方なく相手をしてあけるのだ。

 

「あ、でてきたぞ!勝負だレックスー!!」と叫びながら、いきなり棒を持って振り下ろしてくる。

 

俺はそれを右半身を引き軽く交わす、そして武器を奪い、背中に棒で1撃をくらわせる。

 

「くっそー!アランをよくもー!」

 

「まてコリブ、キリル、ここは俺が」

 

 そんな言葉も聞かず突っ込んでくる2人、普通に考えればやばい状況だが、俺にかかればなんてことない。

 

1人の攻撃は棒で受け止め、腹に蹴りを入れる。苦悶の表情を浮かべ少し後ろに飛ぶ。

 

 そして隙をついて来たもう1人には、攻撃を交わし足をかけた。転んだところにとどめだ。

 

そうしている間におバカ筆頭は元気を取り戻したらしい、大きく振りかぶって拳を向けてくる。

 

 俺はその手とおバカ筆頭の胸ぐらを掴み懐に入る、下半身を使い一気に放り投げる。


 どこかの国では背負い投げとも言うらしい、グラじいちゃんが教えてくれた。

 

「いってぇー」

 

「なんだよこいつバケモンかよ。」

 

「ままぁーレックスがー」

 

 俺は3人を見下ろした。

 

「今日も俺の勝ちだ。これでちょうど300勝目だな」

 勝ち誇ってやると3人はとても悔しそうな顔する。

 

「「「くっそー明日は絶対負けねーからなぁ!!」」」

 

そう言い残しバカトリオは帰って行った。

 

日々空き時間を見つけては、戦闘を想定して、トレーニングをしている、こんな奴らに負けるはずがない。

 

「おにいちゃん今の見てたよー!?」

 

なんと最悪なことにバカトリオとのお遊びをアイリスに見られてしまっていた。

 

逆に今まで見られたことなかったのがが奇跡なのだが。

 

「毎朝なんかしていると思ったらー、お母さんにいいつけちゃお!!」

 

「かあさんにだけはやめてくれ頼むっ!」

 

「じゃあ今日の山菜採りはお兄ちゃん一人でやってねー」

 

なんと性格が悪いのであろうか、兄妹だとは決しても思えない、思いたくない。

 

「わかったよアイリス。さっさと山へ行こう、、、」

 

 ――――――――――――――――――――――

へへーっとニコニコしながら俺の後をついてくるアイリス、そしてここが貧困街だ。家は主に木で造られており、小さな平家が多い。


少し丘の上に見れるのが貧困街の村長のオークが住む。

 

オークと言ってもそれは本名がオルクであること、見た目がデブであることからつけられたあだ名である。

 

「おい見ろよあいつカーラのとこのへぼていじゃん」

へぼていと嘲笑う声が聞こえてくる。

 

その声の方に目を向けると、子供がなにやら呟きながら家の中へ入って行った。

 

なにを隠そうとへぼていとは俺のことだ。

 

俺には野望があると言ったがそれに関係している。


それをうっかりバカトリオに話してしまったことから、噂が広がってしまった。

 

あいつら今度あったら倍ボコす。

 

そうこうしているうちに山についた、いつも入る道でもう手慣れたものだ。

 

見つけ次第山菜をカゴに入れていく。

 

だがなにか違和感を感じた。森のようすがいつもと違う。

 

「アイリス気をつけてくれ」

 

どうしてー?といい座って虫で遊んでいる、呑気なやつだ。

 

俺はいつもより警戒し、山菜を取ることにした。

 

そして終盤にさしかかっていた時、あることに気づいた。

 

山菜が折れているのだ、それも明らかに不自然な折れ方をしている。

 

「アイリス今日はもうかえr...」

そう言いながらアイリスの方を振り返ったその時だった。

 

およそ2メートルほどの巨体な毛むくじゃらが、アイリスの背後にいた。

 

反射的に俺は走っていた、この速さで徒競走をすれば間違いなく負けないだろう。

 

アイリスは虫に気を取られ気づいていない。

 

その生き物が、手を振り下ろすぎりぎりで、俺はアイリスを抱えて転がった。

 

背中に爪がかすった。

 

なにが起こったのか分からず声を発することができないアイリスの横で俺は戦闘態勢を取る。

 

あいつは確か、ワイルドベアと呼ばれる生き物だ。

 

普通なら夏真っ只中のこの時期に降りてくるとは想定外だ。

 

怒らせると凶暴で一般人、ましてや子供などに勝ち目などはない。

 

ここは俺が囮になるしかない。

 

「アイリス逃げろ!アイリス?」

 

一瞬目を向けるとアイリスは地面で震え悶えている。

アイリスは恐怖のあまり腰が抜けてしまったようだ。

地面がどんどん液体に染まっていく。

 

立つことができなさそうで逃げる事は困難だ。

 

"やるしかない、こいつを倒す"

 

俺は心を決めた。

 

なぁに、かあさんに怒鳴られることに比べたらこんなの!

 

まずは、動けないアイリスからこいつを遠ざけなければならない。

 

地面に落ちている石を全力でそいつに投げ、アイリスと逆方向に動く。

 

上手く気を引けているようだ。

 

ワイルドベアはものすごいスピードで俺に突進してくる。

 

どこかのバカどもとは比べ物にならない。

 

それをスライディングで間一髪で交わし、即座に木の枝を拾ってそいつの脇腹に突き刺した。

 

鈍いうめき声をあげながら右腕で俺を薙ぎ払った。

 

それを直で喰らい数メートルは吹き飛び、木に当たって止まった。

 

"くそいてぇ"

 

一瞬気が飛びそうになったがなんとか踏ん張り起き上がった。

 

木の枝なんかじゃやつに致命傷を与えることができない、何かないか。

 

 

辺りを見回すと小さな斧が落ちていた。俺ら以外に山に入った人が落として行ったのであろう。

 

あれしかない。

 

それは少し遠くにあり、その間はやつに隙を見せることになってしまう。

 

だが一か八かやるしかない。

 

俺は斧を目掛けて全速力で走った、当然ワイルドベアもその隙を見逃すことなく殺意をもって俺に向かってくる。

 

斧が手に届く距離に来たと同時にワイルドベアからも手が届く距離にいた。

 

「お兄ちゃん!!」

 

俺は斧を掴みバランスを崩しながらも高く飛んだ。

 

なぜだろうか、気づけばワイルドベアよりも高く飛んでいた。

 

その跳躍力は明らかに人智を越えた。

 

バランスを崩しながら飛んだことで、空中で横回転し、勢いが付いた斧をワイルドベアの脳天目掛けて振り下ろした。

 

見事脳天に直撃。

 

ワイルドベアは脳天から血を噴き出し倒れた。

 

その様子をみたアイリス何が起こっているのかわからないと言う表情、無意識にでた言葉だろう、アイリスはただ一言こう言った。

 

「怖い」

 

そこで俺の記憶は終わっている。

 






 

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