このスポーツ漫画が嫌い

#365日ショートショート 257

　ああ、まただ。また俺は、スポーツ漫画をひとつ嫌いになってしまった。

　どうしてこんなことをするんだ。くそったれめ。ここまでこの作者を信頼して読んできた俺が馬鹿馬鹿しくなる。

　主人公は血のにじむ努力を重ねて、やっとこの大会に出場した。チームメイトとの紆余曲折、対立も友情もあった。そしてライバル。あのライバルくんにも色々あった。彼自身の問題、目指すところ、そしてお互いの信念。チームが違うけれど、主人公とライバルは互いを認めった仲だ。そのふたりが、遂に激突する。県大会準決勝。遂にこの時がきた。待ちに待った展開だ。

　それなのに……。ああ、それなのに。主人公はケガをしてしまった。仲間を助けるために無理をして、ケガをしてしまった。背中に激痛が走るという。試合当日、痛み止めを打って、ガチガチにテーピングをして、試合に挑むんだと。はぁぁ。溜息しか出ない。ふざけるなよ。

　待ちに待った決戦じゃないか。主人公とライバルの雌雄を決する場面じゃないか。なんでケガなんてさせるんだよ。なんでいらないハンデやリスクをそこに持ち込むんだよ。ふざけるな。こんなの、創作上の野暮なドーピングじゃないか。お互い全力で、フルパフォーマンスで戦ってこそ、決戦だろ。馬鹿。馬鹿野郎。本当に馬鹿野郎。なんでケガさせたんだ。くそっ。くそっ。くそったれめ。

　ああ、また俺は、スポーツ漫画をひとつ嫌いになってしまった。