第4話

 大地を揺らし山のような巨大要塞が動いていた。

 ハリネズミのような武装の数々、一斉に火を吹くと辺りに弾丸の雨を振らせる。

 ハンター達の屍が転がる。


 カンナは新聞を片手にユウに詰め寄った。

「こいつには賞金が掛けられているらしいぜ。

いっちょ私達で狩ろうじゃないか」

「ちょ、ちょっと待て」

 ユウは新聞を確認し青ざめた。

 この辺りでも有名なハンター達がことごとく返り討ちにあり全滅している。

 そんな化け物を狩ろうと言っているのだ。

「こういう大物はニーナが得意だから、大船に乗ったつもりで待って居ればいいぜ」

「はぁ……、前回だってプラマイ0でキツイっていうのに、

弾薬とかどうするんだ」

「それは……。

キッカ様と組むっていうのはどうだ?」

「いやいや、幾ら何でも組んでくれるわけがない。

彼女には何のメリットも無いだろう」

「頼んで駄目なら諦める。

もし受けてくれたら構わないよな?」

 ユウは悩む、キッカと会えるのは嬉しいがカンナの言い分に乗っかるのは何かやばい気がしたのだ。

「……だめ」

「聞こえない。

こういう機会を逃すと二度と会えないかもな」

「ああっ、解った。

好きにしろ!」

 

 

 キッカを連れてカンナが戻ってきた。

「お久しぶりね。

分前は6対4で良いって本当かしら?」

「構わない」

 普通なら山分けだが、キッカの方が格上だ。

 7:3で値切られても文句は言えない。

 6:4で済んだのは幸運だろう。

「どういう作戦で撃退するのか詳しく教えてくれる」

 えっと、ユウは心の中で思った。

 丸投げして何も考えていないのだ。

 ユウはチラッとカンナを見ると、カンナはニーナを指差す。

「詳細はニーナから聞いてくれ」

「直接聞きたいんだけど……。

駄目かな?」

 キッカはユウに近づき微笑む。

「ごめん、今は手が離せない仕事があるんだ」

「それは残念ね」

 ニーナから話を聞いておけば、話ができんだと後悔しつつ。

 漂う甘い匂いにユウはドキドキが止まらなくなっていた。

 キッカが去るとカンナはユウに耳打ちする。

「誂われているだけだぜ。

あんまし下心出していると痛い目に遭うから気をつけな」

「……彼女はそんな人じゃない」

「そうだと良いけどな」

 



 作戦当日、ユウは絶句した。

「なっ……、何でこんなに事に」

 装甲車を全力で走らせ、要塞の攻撃を回避しているのだ。

 装甲車の上部に取り付けられた機関銃をカンナは乱射しながら言う。

「ちゃんと前見て運転しな」

「俺は後方で待機しているだけだと思っていんだ」

「彼女の前で見栄をはるから。

まあ屍は拾ってやるから安心して楽しみな」

「ひぃー無理ーだ」

 作戦は単純明快だ。

 敵を地雷エリアまで誘導するだけだ。

 攻撃しつつ離れれば、距離を保とうとして接近してくる。

 旋回の遅い砲が命中することは殆どない。

 地面がえぐれ、凸凹になっていく。

「上下に揺れると狙いが外れる。

もっと平らなところを走ってくれ」

「無茶言うな、避けるので精一杯なんだ」

 涙目になりながらユウが逃げ回っていると、要塞が爆発し始めた。

 予定の地雷原にはまだ到達していない。

 カンナが運転席に乗り込んでくる。

「さて、後退の時間だ」

「ちょっ、どういう事だ説明しろよ」

「地雷ぐらいでアレを壊せるわけない。

ニーナが地面に隠れて底から内部に侵入したんだ」

「そんな話聞いてない」

「言ったら、地雷まで誘導しなかったんじゃない?

それは面白くないだろう」

「はあぁぁぁっ!

今までのは遊びだってことか?」

「そう」

「巫山戯るな、そんな事を許せるわけない」

「まあまあ、怒るなって。

今からが本番だ」

 ユウは不機嫌になり助手席で膨れていた。

 

 

 カンナの運転で、少し離れた高台に到着した。

 そこには紅茶を飲むキッカの姿があった。

「なんでここに……」

「見学すると言うのが彼女への依頼だからだぜ。

一杯飲んできな」

 ユウはキッカの隣に座る。

「あの……」

「見事でした。

賭けは私の負けのようです」

 賭けってなんの事だろうか、全くわからないユウは反応に困った。

 キッカは微笑み、ユウに紅茶を差し出す。

「ありがとう」

「では一日デートしましょうか。

空いているのは今月末」

「はい、嬉しいな」

 ユウはこの時は、普通のデートだと思っていた。

 それがとんでもない誤りだと知るのは別の話。


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