「たぬきとゆきんこの雪ちゃんのお月見祭り」
むかしむかし、北国のある村に雪ちゃんという
かわいい女の子がいました。
そして、雪ちゃんにはお友達がいて、
その子は、山に住んでいるたぬきの男の子で2人は大の仲良しです。
この日も雪ちゃんは、秋になり稲がたくさん育った田んぼでたぬきくんと待ち合わせをしていました。
すると、たぬきくんがなにか嬉しそうにこっちにやってきます。
「雪ちゃん、お祭りがあるよ!お月見祭りっていうんだ、一緒にいこうよ!」
「わぁ、楽しそう!でも、村長さんが許してくれるかな?」
実は村長さんは昔、悪いたぬきにばかされてたぬきの事が大嫌いで、去年なだれが起きることをしらせてくれた、たぬきくんの事もまだ信じられないみたいです。
案の定、おうちにかえると、両親のいない雪ちゃんを大事に育ててくれている村長さんは大反対をして、とても許してくれそうにはありません。
その代わり、その日はちょうど稲刈りの日でそれが終わったら、村長さんが
雪ちゃんをお祭りに連れて行ってくれる事になりました。
しかし、たぬきくんと一緒に行けなくなってしまったゆきちゃんは少し寂しそうです。
それを聞いたたぬきくんも残念な顔をしましたが、「ゆきちゃん、お祭り楽しんで来てね」と笑顔でいいました。そう、たぬきくんはとても優しい心の持ち主でした。
そして、お祭りの日がやってきます。しかし、ここで思いもよらない出来事がおこります。
なんと村長さんが、稲刈りをしている最中に足をくじいてしまい、雪ちゃんをお祭りに連れていけなくなったのです。
まだ小さい雪ちゃんは一人でお祭りへはいけません。雪ちゃんは悲しくなって、
心なしか冷たい冬の風がたんぼに吹き込んで来るようでした。
しかし、その時です、たぬきくんがやってきて「村長さん、ぼくが雪ちゃんをお祭りに連れていきます!」といいました。
しかし、厳しい村長さんは首を縦には振りません。
それでも、たぬきくんは諦められなくて、何度もお願いしました。
すると村長さんは「ここの稲を一人で全部収穫できたら、雪を連れていってもいいだろう」と小さいたぬきくんには到底無理な難題を出してきます。
雪ちゃんは「もういいよ、たぬきくん」と諦めかけたその時です、
たぬきくんは、葉っぱを取り出して、頭にのせてなにやら唱えると、
なんと、たぬきくんが村長さんに変身しました。
そして、力持ちになったたぬきくんはあっという間に稲刈りを終えてしまいます。
村長さんはびっくりしましたが、渋々雪ちゃんを連れて行くことを許して、その代わり夜が遅くなる前に帰ってくることを二人に約束させました。
「よかったね、雪ちゃん!」
「うん、たぬきくん!」
夕方になって、二人はお月見祭りが行われる、隣町の神社に向かいました。
神社には、露店が出たり、たくさんの人が集まっています。
そして、お日様が落ちていくと、少しずつお月様が姿を見せ始めます。とても綺麗な中秋の名月です。
「雪ちゃん、お月様綺麗だね!」
「うん、たぬきくんのおなかみたいにまんまるだね!」
「あは、ぽんぽこだね!」
そういうと、たぬきくんはおなかを叩いて踊りだしました。
雪ちゃんも一緒に踊ります。
「ぽんぽこぽん ぽんぽこぽん」
二人はとても楽しそうです。
そうしているとあたりはすっかり暗くなって、村長さんの言う通りに言いつけを守り、夜が更ける前に二人は村長さんへお団子のお土産を買って、おうちに帰りました。
「おお、ありがとな」
それを食べた村長さんはとてもうれしそうで、たぬきくんの事も雪ちゃんの友達として認めてくれたみたいです。
そんな様子をお空のお月様もこっそりと見守っていてくれました。
めでたしめでたし
おしまい
オリジナル童話集 セイカ(ペンネーム:はすみん) @ral20102
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