第3話 フランシーヌの場合
「ふわああああーつ」
フランシーヌはベッドの上で、大きく伸びをした。
晴れた土曜の朝、気持ちいい目覚め。
昨夜は友人たちと飲みに行き、楽しい時間を過ごした。昼休みに「カコカヨモカ」に自由企画を立てておいた、きっとたくさん応募があっただろう。
どれほどの参加者がいるのか、どきどきしながらアクセスした。
「あれ?」
応募はたったの3作だ。
おっかしいなあ、とフランシーヌは首を傾げた。
きっぱり、はっきり、わかりやすく主張したのに、肩透かしというかなんというか、期待外れ。
PVもほとんど増えていない、それ以外に反応は、というと。
珍しく連絡メモに投稿が二件。
一件目は純文帝国。
貴殿の大胆かつ勇気あふれる企画に大感激しました。
そんな内容に、フランシーヌは混乱した。大胆なことを書いた覚えは全くない、普通に参加小説を募っただけなのに。感激されるようなこと書いた?
二件目は、ゆめ美という会員から。
「間違ってませんか?」
という出だした。
「タイトルからして、書き専だとアピールしたいのかと思いましたが、趣旨を読むと、『たくさんいろいろな小説を読みたい』という意欲的なものでしたね。
タイトルは間違いではないでしょうか?」
間違い。
フランシーヌは眉をひそめた。
私、ちゃんと書いたよね。
まさか、と思いながら確認する。
「きゃー」
両頬に手をやり絶叫するフランシーヌ。ムンクの「叫び」そっくりだ。
タイトルは「読みま専宣言」となっていた。
なんという間抜け、いや「ま」が余計だった、どうりで登録が少ないわけだ、本文を読めば間違いに気づくはずだが、「読みま専宣言」という一切を拒む強い書き方に門前払いを食わされた気分の会員が圧倒的だったろう。
フランシーヌは、あわててタイトルを以下のように手直しした。
【読み専宣言】なんでも読みたいです、読ませてください、お願いです! 遠慮なくたくさん置いてください、ジャンル不問、童話からエロエロまですべて読みます、おいでませ~♪
ここまで書いておけば大丈夫だろう、やれやれ。
フランシーヌは朝っぱらからぐったり疲れてしまった。
グーッと腹が鳴った。
さて、朝ご飯にするか。
蛇足だが、フランシーヌが書いた本文は、以下のような書き出しであった。
はじめまして、フランシーヌです。
この度、読み専になることに決めました。いろいろ書いてきたけど、自分には書くより読むほうが向いていると気づいたんです。
そこで、読まれたい皆さん、どんどん自信作を置いていってください。ジャンルは問いません、いろんなジャンルの、びっくりするほど面白い作品をお待ちしています。
’(了)
読みま専宣言 チェシャ猫亭 @bianco3
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