そらとぶぺんぎん
@soranosakana
そらとぶペンギン
地球があと3日で滅亡する。
そんなニュースが世界に流れ出した。
僕は4人家族の末っ子。
パパとママとお姉ちゃんがいた。
3日前までは。
パパとママはそれぞれ愛する人と最後を過ごしたい、と言って家を出て行った。
お姉ちゃんと僕は家でTVから流れるニュースを見ながら、地球に迫る隕石の映像を見ていた。
政府は国民が最後を苦しまないように、眠るように死ねるという薬を配っていた。
薬というよりも毒だ。
僕は飲みたくなくて、薬を握りしめながら、じっと天を見ていた。
お姉ちゃんはそんな僕を悲しそうにみて、頭をそっと撫でてくれた。
そして自分の部屋に行って、そのまま出てこなくなった。
僕はずっと窓から空を見上げていた。
もうすぐこの星が無くなるなんて信じられなかった。
きっとこれは夢なんだと思った。
だって、こんなことありえないもん。
だけど、窓の外に広がる宇宙はどんどん明るくなっていく。
いつもと同じ夜なのに、いつもより明るい気がした。
そして、突然僕の部屋に光が溢れた。
眩しくて目を閉じたけど、その光は瞼を突き抜けて僕を襲う。
「うわぁー」
思わず声が出て目を開けるとそこには真っ白な空間が広がっていた。
ここはどこ? 僕は死んだのかな? でも痛みも感じるし、生きてるみたい……。
すると目の前に光の玉が現れた。
『やあ』
えっ!? 喋った! 光の玉が喋ったよ!!
「君は誰?」
『私かい?』
光の玉は少し考えたような素振りをしてこういった
『私の名前はペンギンだ』
そしてペンギンは言った。
『いまから隕石を一緒に止めよう』
へっ? 止めるってどうやって?
『君には特別な力があるんだよ』
僕に?
そうなんだ……
『だから君にもできるはずさ!』
わかった! 僕やってみる!
「よし!じゃあまずはどうしたらいい?」
ペンギンに聞くと
『強く、念じるんだ。隕石なんか無くなれ!って』
そういって、両手を天へと伸ばす。
気が付いたら、光の玉だったペンギンは、僕の知っているペンギンの形になっていた。
そしてその両手を空に向かって上に伸ばして、まるで何かを支えるような動きをする。
僕もそれを真似て、両手を空に伸ばした。
そして強く願う。
隕石なんか無くなれ!
そう思った瞬間、頭の中に映像が流れ込んできた。
それは見たこともない風景。
大きな湖のほとりにある街。
そこは緑に囲まれていてとても綺麗だった。
たくさんの動物たちが楽しそうにしている。
そこに一人の男の子がやってきた。
その子はとても泣き虫で臆病者。
だけど優しい。
初めて見るけど、なんだか知っている子のような気がした。
その子は街の人達に歓迎されて、みんなと一緒に楽しく遊んでいた。
そこで場面が変わる。
今度はどこかの建物の中だ。
男の子が女の子の手を引いて走っている。
二人は何かに追われているようだ。
後ろを振り向くと、そこには恐ろしい化け物の姿があった。
そしてまた場面が変わった。
今度は空から大きな何かが降り注ぐ映像だ。
流星群?
そう僕がつぶやくとペンギンは言った。
『ううん、これは悪しきものたち』
『世界を滅ぼそうと私たちをずっと狙っているものだよ』
私たち?
僕らのこと?
『そうだよ。そして私は君達を守る存在。君達が善きものである限りね』
『この星にいる全ての生命を守ろうとししたんだけどね…』
そういって、ペンギンは少し悲しい顔をした。
『…残念ながら少し遅かったみたいだ』
夜が明けた。
隕石は無くなった。
でも、お姉ちゃんの部屋のドアは開かなかった。
他のいろんなお家の人達も。見かけなかった。
お父さんもお母さんも戻ってこなかった。
隕石は無くなったけれど
人間も一緒にほとんどの人が亡くなってしまったのだと僕は知った。
明るい太陽と、夏の終わりを告げる白い雲が空を覆うそんな日。
僕は、泣いた。
そらとぶぺんぎん @soranosakana
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