第17話 新たな仲間

家に戻りマールとナルモに冒険者ギルドからの依頼内容について話して聞かせた。

「え~、危険じゃないの?」

「ハイエルフって出会ったら食べられちゃうという話しにゃ・・」

おいおい。


「大丈夫だ、地下25階まではかなり強力な護衛が付くんだ。それも難なく地下30階まで行ける冒険者たちがな。それにもしかしたらそのハイエルフは俺の知り合いかもしれないし」

「本当に大丈夫?わたしも付いて行きたい」

「う~ん、護衛する対象が増えるとあまりいい顔はしてくれないしな」

ということで、ダンジョン入口までは一緒に行く事となった。


今回護衛してくれる冒険者全員が、地下20階までの転移魔法陣を使えるという事で、俺もそれに便乗することになった。マール、ナルモ、それと掃除仲間たちに見送られその魔方陣に乗った。


それにさすがギルドマスターじきじきに選出してくれた冒険者たちだけあって、途中に出てくる魔物とかまるで相手にしてない。

なのでさくさくと進んであっという間に地下25階の待ち合わせ場所へ。


その中央には深いフードで顔を隠した人間が一人。

「ご苦労様、さあ掃除人をボクに渡しておくれ」

「ちょっと待て、あんたがその人間だと証明してくれ」と護衛パーティーのリーダーが問う。

俺は知らんふりして、そのリーダーの後ろに立っている。

この人間の声ですぐわかった。やっぱりモリノだ。


「ああ、そうだったね。ごめんね。これでいいかな?」

といってフードを外すモリノ。

その途端、冒険者全員が絶句した。


そこにいたのは、確かにハイエルフだ。

しかもありえないほど美しい少女だ。


おう、最後に見た時よりさらに可愛くなってやがる。

どうなってんだこいつは。

マリアが人間族最高の美女なら、このモリノはエルフの中でも最高の美少女だろう。しかも年齢不詳で妖しい雰囲気も持つ。


「もういいかな」と言ってまたフードをかぶるモリノ。

「・・え?・・あ、ああすまなかった・・どうやら本人のようだな。それとこいつは掃除人のケンタだ。よろしく頼むぜ」

「ケントさんか、うふふよろしくね」

なにがよろしくねだ。


「じゃあボクたちはこれで。夕方までには、彼をエントランスホールまで責任を持って送り届けるからね」

と言ってモリノは俺の手を取り、そして一緒に消えた。


冒険者たちの息を飲むような気配があったが、次の瞬間まったく別の空間にいた。


「・・あんちゃん・・会いたかった・・うう・・うえん」

その空間に入るなりフードとローブを取り去って泣きながら抱きついてきたモリノ。

「おう、元気だったか?よく俺だと分かったな」

「・・もう・・ばか・・ボクがあんちゃんを分からないなんて絶対にないから」

あはは、なんかミサトにもそんなこと言われたな。


ひとしきり俺に抱き着いて泣いていたモリノ。

やっと落ち着いてきたのか照れくさそうにこう言ってきた。

「ようこそボクの国へ」

「やっぱりここはそうなのか、前よりやたら広くなったな」

俺たちがいるのは、周りに何もない大草原だ。ダンジョンでは無い。

太陽は出て無いが、青い空に白い雲が風で流れている。


ここは時空魔法の使い手であるモリノが作る異空間だ。

巨大すぎて、地平線の彼方はもうかすんでいて何も見えない。

そして中央に大きな屋敷がある。

「まずはゆっくりして」と俺の手を引いてその屋敷に入って行くモリノ。

「ああ、この家も懐かしいな。俺の部屋はまだあるのか?」

「当たり前でしょ。みんなの部屋もそのままだよ」


あの5人組と冒険するときには野宿や野営ではなく、全員でこの屋敷で身体を休むことができた。

当然魔物とかいなくて安全だ。しかも時も止まっているので、急いでいる時には非常に重宝したのだ。ひどいときには魔物との戦闘中にここに入って、休んで(食事も)また戦うという事も出来てた。

マリアとかはのんきに風呂まで入って、また戦闘に戻るとかしてたな。


モリノに入れてくれた紅茶を飲みながらしばらくは近況等の情報交換をしていた。

「ところで今回はどうしたんだ?俺に会いにきた訳じゃないだろ?」

「もう!あんちゃんは~。あんちゃんは常に一番なの!でもちょっと待っててね」と言って奥の部屋に消えて行ったモリノ。


しばらくして戻ってきたが、おや?もう一人いるのか?

「あんちゃん紹介するね、ボクの妹のメローナ」

「メ、メローナです・・よろしくです・・」

見るとどことなくモリノに似ている。


「え?お前に妹がいたのか?」

「あ~、いたと言うか出来ちゃったというか」

は?

「あんちゃんには本当のこと言うね。このメローナはママが違うんだ」

「・・はい、わたしのおかあさんは人間なんです・・」

え?なんだと?

するとこの子は・・まさかハイエルフと人間のハーフなのか?

「うん、世界で初めての」

なんだと~!!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ありえない。

ハイエルフという種族は気高く、中には人間を見下している者もいる。

実はこのモリノも出会った当初はそうだった。いまではそんなことは微塵も感じられないが。

なので話しをする事、いや見る事も難しいと言われている種族だ。

しかもハイエルフとエルフでもそんな関係にはめったにならないようだ。

それだけ孤高のハイエルフが・・。


「ごめんね~、パパったら節操がなくて」

・・お、おう。

聞けばメローナの母親は聖女であり、元から数少ないハイエルフとの話ができる人間だったと。

そのメローナは、前から見ると確かに人間だ。

耳も俺たちと同じで普通だ。だが背中に小さい羽がある。


「でね、ここから本題なんだけど、あんちゃんのところで養って欲しいんだ。もちろん掃除も問題ないし、冒険者としてもなかなかだよ」

なに?こんなか弱そうに見える娘がか?

「あ、あのわたし、剣士なんです・・」

と言って自分のステータスを俺に見せて来たメローナ。


【名 前】 メローナ・レイクモンド

      (ハーフハイエルフ)

【年 齢】 15

【JOB】 剣士 

【職業レベル】 16

【一般スキル】

<レイピア SL⑤><精霊術 SL⑤>

【特殊スキル】 

【ユニークスキル】


おお、レイピアか。細身で先端の鋭く尖った片手剣だ。

切るというより刺突用だな。なるほどメローナの細い腕に合ってる武器ともいえる。でも見た目より結構重いんだぞ、これ。


「おう、俺と同い年だな。ところでこの子も長寿なのか?」

「う~ん、わかんない。なにしろ初めてだから」

そりゃそうか。


「ところでなんで俺に預けることにしたんだ?あ、言いにくいなら聞かないが」

ハーフなんとかについては、いろいろありそうだからな。

「べつに疎まれているとかはないんだ。普段は人間として生活や冒険なんかしてるからね。ステータスや背中の羽も認識阻害の術で分からないし」

「あの、あたし冒険が大好きなんです・・でも他の人間とか怖くて・・」

「それにあんちゃんのパーティって前衛いないでしょ」

なんだそこまで知っているのか。


「本当にいいんだな?俺は清掃人なんで、半分は掃除関係の仕事が入るぞ」

「お掃除なら任せて下さい!」

おう。

「わかった、あとはメンバーへの確認が残っているが、良さそうな子だし問題は無いようだな。しかもお前の推薦ならばな」

と俺はモリノの頭をなでた。

「えへへ」途端にとろけそうな顔になったモリノ。

「わあ、すごいですう、モリ姉のこんな顔初めてみた・・」


「ところでなんでボス部屋の掃除が必要なんだ?」

「え?部屋の掃除?そんなこと言って無いよ。ボクは掃除人を呼んで欲しいって言ったんだよ」

なんだ、そうなのか。じゃあ途中の伝言で話しが変わっていったんだな。

「それに今回、けっこう大勢の冒険者が動いているぞ。報酬とかどうするんだ?」

「これじゃあだめかな」

といって、隅にある箱を指差すモリノ。


見るとなにやら銅のような金属の塊がある。

「げっ!オリハルコンかこれ!」

「うん、里の山で採れた」

・・簡単に言ってくれるぜ。でも報酬として十分だ、いや十分すぎる。


その後、俺、モリノ、メローナは一瞬にして、俺の家の裏庭に転移した。

これもモリノの時空魔法のひとつだ。


裏庭の扉を開け家に入った。

「はにゃ?なんで庭から入ってくるんにゃ!」

びっくりするナルモ。

「あれ~、お兄ちゃん!なんで?」


俺はマールとナルモ、モリノ、メローナを紹介していきさつを説明した。

まあいろいろと省いたところもあったがな。

その後俺とモリノはまたダンジョンに戻り、待ち構えていたギルドや協会の担当者に掃除終了の報告を終えた。


なぜ掃除が必要だったかという疑問については、そのハイエルフが季節ごとにダンジョン構造が変わることを知らなかったと言う事にしておいた。

苦しい内容だったが、「ハイエルフの考えてる事はわからん」と。

まあギルドと協会には、オリハルコンが大量に入手できたので、どうでもいいことなんだろうな。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


ということで家の居間には、俺の他に四人の女の子がいる。

さっきまで全員で夕食を食べ、今は思い思いのスイーツを食べてる。

なんかあっという間にこいつら友達になってるぞ。しかも全員美少女だ。

まあモリノの年齢は不明だが。


結局、モリノは明日ここを離れることになり、メローナはここに住むことになった。

部屋は当初マール用と割り当てていた部屋を女子三人で共有。

そこに各自の着替えや小物とかおいてあるそうだ。

あるそうだと仮定形なのは「絶対入っちゃダメ!」という理由だ。

おお、お兄ちゃんは悲しいぞ・・。


また俺の部屋と居間のしきりを取り払っていて、大きな部屋にしてある。

ちなみに大きなベッドに交換してあって夜はそこに全員で雑魚寝だ。


まったく・・なんでみんな俺にくっつきたがるのか訳がわからん。

以前も右にマリア、左にミサト、腹の上には小柄なモリノで寝たこともある。しかもやつらは朝まで盛り上がって話しをしていた事もしばしばだ。


次の日の朝、もうモリノの姿はなかった。

「すぐそばにいるからね」と言っていたがどこにいるのやら。

まずはさっそくメローナの装備の充実だ。

もともとのメローナのステータスはこうだ。


【名 前】 メローナ・レイクモンド

      (ハーフハイエルフ)

【年 齢】 15

【JOB】 剣士 

【職業レベル】 16

 HP  89

 MP 130

 筋力  53

 体力  48

 知力 131   

 魔力 111

 敏捷 120

 運   39

【一般スキル】

<レイピア SL⑤><精霊術 SL⑤>

【特殊スキル】 

【ユニークスキル】


ここにダンジョンで見つけたレアものの装備で固める。

いままで前衛職用に取って置いたものだ。


【名 前】 メローナ・レイクモンド

 HP 147

 MP 141

 筋力  53(+20 +5)

 体力  48(+20 +20 +5)

 知力 131(+5)  

 魔力 111(+5) 

 敏捷 120(+5) 

 運   39(+20 +5)

【装備】

「忘却のレイピア」

傷を負わせると50%の確率で相手のスキルを忘れさせる

筋力+20 体力+20

レア度:超伝説級


「エクスカリバーダガー」

アーサー王が隠し持っていたダガー

相手の剣を受け止める確率100% 一回の戦闘で一回限り

レア度:反則級


「黒スライムヘルム」

衝撃を50%の確率で吸収する

レア度:反則級


「青ミスリルの胸当て」

ミスリルの中で最も希少な青ミスリルで創られた胸当て

毎回75%の確率で攻撃を無効にする

体力+20 運+20

レア度:反則級


「 ヘパイストスの腰かたびら」

鍛冶の神 ヘパイストスが創ったとされる腰かたびら

相手のレベル100以下の攻撃は受け付けない

レア度:超反則級


「浮遊ブーツ」

3mまで浮かぶことが出来る

レア度:超レア級


「回復のミサンガ」

10歩で1HP回復する

レア度:レア級


そして・・・。

「精霊の指輪+5」

エルフのみ装備可能

全てのステータスを+5

レア度:反則級


そしてこれが俺の<ステータス操作>で外部に見せるインチキだ。

【名 前】 メローナ

【年 齢】 15

【JOB】 剣士 

【職業レベル】 16

 HP  80

 MP  84

 筋力  43

 体力  38

 知力  29  

 魔力  27

 敏捷  31 

 運   29

【一般スキル】

<レイピア SL⑤>

【特殊スキル】 

【ユニークスキル】

【装備】

「古いレイピア(中級品)」

「普及品の胸当て(下級品)」

「普及品の腰かたびら(下級品)」

「おしゃれな指輪(おみやげ品)」

「ありふれたブーツ(下級品)」


【一般スキル】

<レイピア> SL①:レイピア装備可能

       SL②:急所突き(弱)

       SL③:重量軽減

       SL④:斬撃(弱)を飛ばせる

       SL⑤:ダブルインパクト

          (一回の攻撃で二回の打撃)


そしてこれも見えなくしてるが、エルフなら全員使える<精霊術>。

<精霊術>  SL①:精霊(契約済)を呼び出せる

       SL②:初級回復(HP20%回復)

       SL③:精霊ナレッジ

          (大自然の知恵にて鑑定する)

       SL④:精霊スクリーン

          (姿を透明にする)

       SL⑤:中級回復

           (HP50%回復)および毒を中和する


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