第6話
……ダメだよ。それだけは絶対にできない。もし仮に彼が受け入れてくれたとしても、私が彼を幸せにできるとは思えない。彼はとても魅力的な人だから、きっとすぐに素敵な女性が現れるはずだ。
だから、今の私にできることは、できるだけ長くレオくんと一緒にいることだけなのだ。
「うっ……。うう っ……」
私は声を押し殺しながら、涙を流し続けた。
翌日、約束の時間よりも30分前に中央広場へ到着した俺は、噴水の縁に腰掛けてリーゼロッテさんが来るのを待っていた。
「……まだ来ないか」
かれこれ15分ほど待っているのだが、彼女は一向に現れる気配がない。
「もしかして、何かあったのか?」
俺は心配になって、リーゼロッテさんの部屋まで行ってみることにした。だが、残念なことに部屋の扉には鍵がかけられており、中に入れないようになっていた。
「リーゼロッテさん……」
俺が彼女の身を案じて俯いていると、背後から突然何者かに声をかけられた。
「あれ? 君は確か昨日リーゼちゃんにお弁当を作ってもらっていた子じゃないかい?」
振り返るとそこには白髪の老人が立っていた。
「あなたは……」「ああ、自己紹介がまだだったね。私はここの管理者を務めている者さ。よろしく頼むよ」
「はい、こちらこそ。俺はレオといいます。リーゼロッテさんとは少しの間一緒に行動させて頂いてるんですけど……」
「うん? どうかしたのかい?」「それが、リーゼロッテさんの姿が見えなくて……。どこかに出かけたりしていませんか?」
「ふむ。なにやら大変そうだね。よし、わかった。君を案内しよう」
「え? いいんですか? ありがとうございます」
「なーに、気にすることはないさ。リーゼちゃんのことは任せてくれ。……それより、君の方は大丈夫なのかい?」
「はい、問題ありません。じゃあ、行きましょうか」
そして、俺たちはリーゼロッテさんの捜索を開始した。
◆
「リーゼロッテさん。一体どこに行ってしまったんでしょうか?」
「う〜ん……。やはり、街の中にはいないようだね」
「そうですか……」
リーゼロッテさんを探すこと10分。俺たちは街の外へ出て、草原までやってきていた。
「リーゼロッテさんが行きそうな場所とか心当たりはないのかい?」
「すみません。全くないです」
「そうか……。なら、仕方がないね。今日は諦めて帰ろう。もうすぐ暗くなってしまうからね」
「わかりました。……あの、最後に一つ聞いてもいいですか?」
「うん? なんだね?」
世界は愛で満ちている 酒井恵理 @erisakai
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。世界は愛で満ちているの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます