第5話
……一体どういうつもりなのだろうか? まさか、俺のことを揶揄っているだけなのか?……いや、きっとそうなんだと思う。だって、リーゼロッテさんみたいな美人が、俺なんかを好きになるはずがないから……。
「レオくん。手が止まってるわよ? 早く終わらせて部屋に戻りましょう?」
「は、はい……」
それから、俺はリーゼロッテさんの言葉通り急いで洗い物を済ませた。
「……よし、終わったわね。じゃあ、戻りましょうか」
「そうですね」
そして、俺とリーゼロッテさんは食堂を出て、それぞれの自室へと戻ったのであった。
◆ side リーゼロッテ・ウォーカー
「ふぅ〜。なんとか乗り切ったわね」
……危なかった。もう少しで、自分が言ったことがバレてしまうところだった。だけど、結果的にはうまく誤魔化せたから良しとしましょう。……それにしても、レオくんったらあんなに動揺しちゃって可愛かったなぁ。
私はベッドの上で仰向けになりながら、先ほどのことを思い返していた。すると、自然と笑みがこぼれてくる。
……いけない。このままだと、またニヤけちゃうわね。
私は顔に手を当てて表情筋を引き締めた。
「それにしても、今日は本当に楽しかったなぁ〜」……明日はいよいよ再戦だ。正直、かなり緊張している。でも、不思議と不安はなかった。むしろ楽しみでしょうがないといった感じである。「ふふっ……。私も案外単純な女なのね。……でも、そんな自分も悪くないかな」
私は天井を見上げながら独り言を呟いた。その瞬間、なぜか胸がチクリとした。でも、この痛みが何を意味しているのかはわからない。……ううん、本当はわかってる。ただ、それを認めたくないだけだ。
「……ダメよ、リーゼロッテ。しっかりしなさい」
そう自分に言い聞かせると、私の目からは涙が溢れてきた。……どうしてだろう? なんで泣いているんだろう? 別に悲しいことがあったわけじゃない。むしろ幸せな時間を過ごしているのに……。]
「……ぐすっ」
私は嗚咽を漏らしながら、枕に顔を押し付けた。……おかしいな。なんでこんなに苦しいの? なんでこんなにも寂しいの? ねぇ、誰か教えてよ。どうして私、レオくんのことばかり考えちゃうの?どうして、彼のことを考えるとこんな気持ちになってしまうの……? そんな疑問に対する答えは一つしかなかった。でも、それは私がずっと否定してきたことだ。だから、今更認めることはできないし、認めたところでどうしようもないのだ。……そう。認めてしまったら最後、私は彼に依存してしまう。それはつまり、彼と恋人になるということを意味する。
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