第46話 夢のカナタへ
いつも通りの日々。
電車に乗って、会社で働いて、かえって、寝る。
本当に、ただのルーティンだ。
頭は空っぽで、ただそれだけ。
人間の体は、ただ生きてるだけの物体。
俺がまさしくその通りで、きっと他の奴らも同じだ。
そしてその中でも俺は、異性という存在にはとんと恵まれない哀れな中年だ。
女性には関心も向けられず、特に年上の方からは童貞いじりの逆セクハラを我慢する日常。
出社する電車の中にいるそこら辺の女を見て、ニチャってする拗らせおっさん。
そして会社に着けば我に返り、ただのルーティン作業。
これがいつも通りの日々だった。
***
***
***
「パパ」
目の前にいるのは、誰だろうか?
「眠ってるの? お仕事疲れたの?」
裸の少女だ。
蛍ちゃんの面影が見える少女。
そして蛍ちゃんよりも、ロリだった。
「お風呂の中で眠っちゃうなんて……ふふ」
俺も裸で、少女と一緒に湯舟に入っていた。
「パーパ? えへへ、つんつん」
ほっぺを突かれる。
「ママに怒られるよ? お風呂でねちゃだめだーって」
ママ? パパ? いったい何のことだろうか?
「やっぱり起きないや……んもうダメなパパ
わたしが毎日入ってあげなきゃ、だね」
俺はついに口に出す。
「きみは……だあれ……?」
「パパ!? ……んもう、寝ぼけすぎ。カナタだよ」
いい名前だと思った。
こんな子が娘で、妻がいて、なんかもうたったの数か月のロボットのようなルーティンが嘘のようである。
俺は、しあわせ——
***
「育滝さん……?」
「は!!」
俺はどうやら、寝ていたらしい。
「蛍ちゃん」
「んもう、電車で寝ちゃうだなんて、疲れてたんですね」
「はは、そうみたいだ」
そう、いつも通りの電車デート。
蛍ちゃんと二人っきりの朝だ。
「ねえ育滝さん」
そういって、蛍ちゃんは、メモ書きを取り出した。
電車の中、話し声で迷惑かけないようにするための道具だ。
【大事な話があるんです】
大事な話とはなんだろうか?
俺は首をかしげる。
【心して聞いてください】
俺は蛍ちゃんの顔を見る。
かなり真剣な面持ちだった。
俺は正直身構えていた。
なんだろうか?
なぜ、こんなにも緊張するんだろうか?
自分でも答えが出せなかった。
蛍ちゃんは、さらさらと一言だけ書いた。
その一言を見た瞬間——俺はすぐに腑に落ちた。
【赤ちゃんが、出来ちゃいました】
俺は、真っ白になる頭の中で、一つだけ思い浮かんだ。
——正夢だったんだ。あの光景
俺みたいなやつが、こんなに素敵な少女と出会って、子供にも恵まれて——
ただのおっさんが、おれが——
「ふ——うううううぅううううう……わあああああん!」
俺は泣き崩れていた。
車両に乗っていた乗客は、何事かとこっちを見る。
「い、育滝さん!?」
「お、おれ……! ぱ……パパに、なるんだ……ああああああああ!! ついにパパになるんだぁあああああああ!! わあああああん!!」
「……ふふ、まだ泣くのは早いですよ、育滝さん」
「ほ、ほたるちゃん……うれしいよぉ……」
「はいはい」
よしよしされる俺。
少しだけ冷静になったので、周りを見た。
乗客たちは、なんだか温かい面持ちで、俺たちを見つめていた。
これまでただの、俺と同じただのロボットだと思っていた人たちが、赤の他人である俺たちに、これほど気にかけてくれるだなんて信じられなかった。
いや、俺は気づいてなかっただけなのかもしれない。
みんな実は、見ず知らずの他人のことを心の奥底では気にかけているってことを。
「落ち着きましたか?」
「うん、大丈夫……蛍ちゃん」
「はい?」
「次の休みに、蛍ちゃんのパパの元に挨拶しに行こう」
「——はい!」
これからもっと大変なことになるだろう。
蛍ちゃんのママには、間違いなく首を絞められるだろうし。
結婚するにも、蛍ちゃんは今14歳だから2年先になるだろうし。
なにより子供が自動的で安全に生まれることなんてあるわけがない。
未来は分からないし、分かるわけがない。
けれど俺はきっと、どんな未来が待っていても、蛍ちゃんと結んだ絆は手放さない。
夢の少女——カナタと出会うためなら——
俺は蛍ちゃんと一緒に、夢の彼方へと羽ばたく努力をするんだ——!
「蛍ちゃん。愛してる」
「いきなりですか……!? ……わたしも、愛してます。育滝さん」
そしてその場にいた電車の人々が、小さな拍手で俺たちを祝福するのだった。
———
応援ありがとうございます!!!!!
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最後までお付き合いいただけて、心より感謝申し上げます!!!!
次回作は短編かタタリちゃんの続きのどちらかです!!!!
後、次にエロ展開するときは素直にエロ小説として書きます!!!!!!!!
どうぞご期待ください!!!!!!!!
電車の中でJCをナンパしたら、毎日が電車デートになりました シャナルア @syanarua
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