0-3


「……」


「セリちゃん?どうしたの?やっぱり……落ち着かない……かしら?」


「……ううん!お母さん!そんな事ない……!」



記憶を思い出し1日が経過して。

今、私はあのゲームの世界……リ・リヴァースの地へと足を踏み入れていた。ゲームでは背景として見ていたあの景色が当たり前だけど動いている!

あのゲームのファンである私だ。勿論色々な場所を見て回りたい……けど、あくまで〝今の私〟は初見なのだ。大人しくしていなければ。

……それに



『ギャウ』


「ふふ、良かった。この子も安心したみたい」


『ウギャウ』



母親の隣に浮いているの小さなドラゴン。きっとこの子が母親の守護獣なのだろう。

くりくりとした丸い瞳に光沢のある銀色の鱗、そしてなにより全体の大きさが500mlのアルミ缶ほどしかない。……控えめに言わなくてもとても可愛い。

好奇心に駆られた私はそっとドラゴンへと手を伸ばす。するとドラゴンは目をぱちくりと瞬かせ、何と自ら私の差し出した手へと体を擦り付けて来た。えっ良いんですか!?と口に出さなかったのは褒めて欲しいくらいだ。



「あらあら、セリちゃん。さっそくピュリと仲良くなったのね」


「……この子ピュリっていうの?」


「そう。こうやって守護獣と契約を結ぶとね?不思議と頭の中に契約した子の名前が流れ込んでくるの。」


『ギャーウ』



小さくドラゴン……もといピュリの少し固くも、生き物の体温を感じる頭を撫でる。ピュリは母親の声に同意するように両手を上げた。

その姿に和んでいれば遠くから父親が駆けてくる姿が見え……



「すまない2人とも!昔の友人と話していたら遅れてしまったよ!」


「あら、それってロゥフさんの事?」


「ああ、話している途中に私の子供の守護獣を見て欲しいと言ったらすごい速さで準備すると言って先に森へ行ってしまったけ……ってセリ?どうしたんだい?」


「うぇっ!?」



父親の背後にいる〝それ〟に視線を奪われていて話を聞いていなかった私からおかしな声が発される。私の視線を目で追った父親はあぁ、と納得したように呟くと〝それ〟を前へと押し出した。



「この子は私の守護獣のボロスだよ。……と言っても、戦う時以外は回っているだけだしあまり気にしないで大丈夫だ」



〝それ〟は自らの尻尾を口にくわえゆっくりとその場で動いている……赤い鱗を持つ蛇だった。前へと押し出されても同じ速さで回転している。とてもシュールな光景である。

私の視線を感じたのかボロスと呼ばれた蛇は一瞬こちらを視界に捉え…………るも、何をするでもなく回り続けている。本当にシュール。



「この子を見てると眠くなっちゃうのよねぇ」


「お父さんも初めて会った時は驚いたものさ。急に私の足を囲むように現れてね」


「その話はもう何度も聞きました。

さ、お話はさておき。ロゥフさんの所へ行きましょうか。これからセリちゃんの守護獣を決めるし、ロゥフさんも待たせ続けちゃうわ」


「おっと、申し訳ないね。じゃあ行こう」



父親は眉を下げ微笑むとポケットから鍵を取り出す。ま、まさかそれは原作で何度もお世話になるマジックアイテムのバックキー!?

私の予想通り、父親は鍵に付いたダイヤルを親指で回して何も無い空間へと鍵を刺した。すると鍵を刺した場所から光が溢れ扉の形へと変化し、鍵はドアノブへと姿を変えた。

父親はドアノブを回して扉を開け先へ続く空間へとボロスを引っ張って歩いていく。その後ろをピュリと母親が着いていき、私へと同じように小さく手招きをする。


私はドキドキと高鳴る胸を落ち着かせるように深呼吸をし、両親の後へ続くようにその空間へと歩いていくのだった。


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転生した私は聖女の生まれ変わりらしいけれど、主人公の為に死ぬつもりはありません! ハムスターだんご @hamudango

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