第11話嫁さん(後編)

「どうして?」

と、彼女は言った。

「これ以上、僕と付き合うと君に迷惑がかかる。お願いだから別れてくれ」

僕はまた、ターキーと生チョコレートを注文した。

「ねえ、ハヅル君。うつ病って治らない病気なの?」

「……完治はない病気。良くなれば寛解と言うけど、精神病は悪くなったり、良くなったり、振り子状の病気なんだ。うつ性認知症とかあるし」

彼女は、ジントニックを口に運び、僕はたばこに火をつけた。

「明日、会社でうつ病について、詳しく勉強してみる。2人で病気と闘おうよ!別れるなんて、寂しい事言わないでよ」

僕はたばこを吸いながら、

「うつ病でも付き合ってくれるの?来月、僕は会社辞めるんだよ。直属の上司がこの会社を休職にあたって、聴こえが悪いからうつ病ではなくて、ヘルニアで休職になったと、診断書出せっ!って、言われたけど、総務課の連中が心療内科まで付いてきさて、会社に僕がウソをついたって言い出して、僕は辞めると言うより辞めさせられるんだよ」

僕は灰皿にたばこを押し付けて、ターキーをあおり、チェイサーで流した。

「それって、上司が悪いんだよね?何で事実をしゃべったんでしょ?」

「理不尽なのが、ブラック企業のブラックたるゆえん。でも、大丈夫給料は半分になるけど、福祉施設で仕事するから」

彼女は、ジントニック一口飲み、

「病気の事も話したの?」

「いいや、うつ病っていうだけで仕事が見つからないから、クローズで」

「クローズってなに?」

「健康体であることにする。病気を隠す事」

「ばれたら?」

「ま、十中八九クビ」


「でも、別れないよ。ハヅル君といると楽しいし。ちょっとたばこ臭いけど。この際、同棲する。ハヅル君家か46000円で私ん家が53000円だから、一緒にすれば安くつくから」

「ありがとう。そこまで考えてくれて」

僕らは、同棲を始め新しい職場で働いていたが、勤務開始2ヶ月後、薬を飲んでいることがバレてしまい、薬品名から精神病がバレてクビになった。

彼女はショックを受けた。更に、クリニックで3年間も治療しても良くならないから、彼女が大学病院へ連れて行ってくれた。

新しい病名は、

『統合失調症』

だった。即日、措置入院になった。

一週間程入院生活を送り、退院した。

無職なのに、婚姻届を出した。静養の後、パートを始めて、バリ島で2人きりの結婚式を挙げた。

それから、6年後複雑な理由で別居している。息子も嫁さん姉妹と共に住み、僕は1人暮らし。毎週日曜日に息子に会いに行ったが、今は月イチ程度。

LINEもあるし、最初は寂しかったが慣れてきた。

嫁さんには、感謝しかなない。別居と言っても自転車で20分の距離だからすぐに会える。

いつまでも、嫁さん、息子を愛しています。

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