人との絆とは何か。
本当に人を愛する、とは?
レビューを書くのが難しい。この作品について第三者が語ろうとすると、何を書いても押し付けがましく、説教くさい感じになってしまう気がする。
この作品には、そんな説教臭さは微塵もない。作者自身のことと、これまでに関わってきた人々や経験した出来事が淡々と、仄かに温かく綴られている。理不尽な事実に対しても、非難めいた叫びや糾弾の言葉などはただの一言もない。
だからこそ、読み手の胸にひたすらに突き刺さる。この社会の冷ややかさ、やり切れなさが。そして、愛する人々と繋ぐ温かな結びつきがどれだけ人の心に力を与えるものなのかが。
作者自身が意図的なメッセージを一切読み手に押し付けないからこそ、とてつもなく深い問いかけが読み手の胸に残る。そんな魅力に満ちた作品だ。