第10話嫁さん(中編)

僕が28歳、彼女が23歳のときの秋から付き合い、1ヵ月後には、会社に近い彼女の家に入り浸りになった。

合鍵ももらった。

その頃から、僕の身体に異変が起きる。どんだけ夜勤しても(夜勤の日は彼女を起こすと可哀想だから自宅に帰っていた) 眠れないのだ。だから、夜中の4時まで開店している寿司屋でビールを飲んで、シャワー浴びて、着替えて寝ようと努力したが眠れない。

西区の沢の屋と言う赤提灯に行く途中に、心療内科がある。

眠りたいから、睡眠薬とデパスをもらった。

劇的に眠れるようになったので、彼女と会社にはバレないように、月イチ心療内科通いをしていた。


半年後、睡眠薬飲んでも眠れなくなる。クリニックで自律神経失調症と診断されて、会社を1ヶ月間休んだ。彼女にも、休んだ理由を話した。たが、彼女は僕の心配をしながら、昼ご飯と夜ご飯を作ってくれた。休んでも、基本給は貰える。傷病手当ももらえる。全てを彼女に渡した。勿論、家賃と携帯代を引いた金額を。

物凄く強い睡眠薬なので、夜中起きれないなで、おねしょをするので薬になれるまで、紙おむつを履いていた。

彼女はいつも暗い顔をしている僕を連れてバス旅行などに連れて行ってくれた。

それから、ずっと後になるが彼女は、僕との闘病日記を書いていた。

”いつもより、笑顔が多い”、”今日はずっと遠くを見つめている”とか僕を観察してくれた。


1ヶ月後には会社に復帰したが、以前のように頭は切れず、現場監督もしたが、ミスが多い。会社で取っ組み合いのケンカもした。おかしい。感情をコントロール出来ない。復帰して半年後クリニックへ行くと、

「典型的なうつ病です」と、言われた。

3か月の休職を言い渡された。課長に電話すると、おかしいとは思っていたらしく、コンテナ船の責任者だから、現場慌てふためく。

僕には関係ない。僕1人だけ夜勤ばかりさせていた会社に責任がある。僕は働き過ぎてうつ病になったので、会社への恨みは大きい。


僕は、うつ病と診断されてもう一度健康体には戻れない身体になってしまい、彼女と別れる前の最後の夜の薄暗いバーに彼女を連れていった。

僕は普段ばなしを少ししてから、彼女に別れの言葉を告げた。

彼女は、ジントニックのグラスを見つめていた。

僕は、ターキーをストレートで飲みチェイサーで流した。口内に甘い薫りが、漂う。

彼女は口を開いて、こう言った。

「どうして?」

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