四半妖精の少女

笠置エナ

第1話 果てのキャラバン


この世界は混乱に満ちていた……


悪気と呼ばれる目に見えないエネルギーによって凶悪化する魔物、

地殻変動(侵食)で住む家を失う人々、

この物語は、そんな世界の辺境でひっそりと暮らす、とある家族のお話し。


世界をまたにかけるキャラバンの到着から始まる……。


「マキ~、そろそろ目的地じゃない?」

元気のイイ声が辺境の地に響き渡る。


「団長……分かりましたから、ちょっと静かにしててください」

マキと呼ばれた女性が制止する。


団長と呼ばれた元気のよい女性、名を”メイ”。

元は王都の生まれだったが、紆余曲折の後、

キャラバン「リング・クルーズ」として、

世界を廻っている。


各地の特産物や素材を生かし、地方へと加工、売り歩き、伝えている。

そんなキャラバンの仕事だけではなく、

彼女らにはもう一つの一面がある……。


「もうすぐだって聞いたけど?」

見た目は年齢不詳、落ち着いた雰囲気の男性が馬車から顔を出した。


「マキシ、おはよう!」

「うん、おはよう、ごめんちょっと寝過ごした」

元気のよいメイの挨拶と、落ち着いた声のマキシ。


「見えてきたよ!マキシ」

先頭の馬車から手を振り呼ぶ女性、名を”チエリ”。


「おはようチエリ、今いくよ」

寝ぼけ顔の笑顔で返し、先頭に向かうマキシ。


手綱をチエリと代わり、隣に座るマキシ、

「さっき林の隙間から畑や小屋が見えたよ」

「そっか、ありがと」

チエリは嬉しそうに微笑む。


「楽しそうだね、チエリ」

「だって久々の村じゃない?」

「そうだね……果ての村……」

「……うん」

二人は見えてきた村を、どこか遠い眼差しで見ていた……。


キャラバン独自の情報網と調査の結果、

次に侵食が起こりうる場所を特定していた。

そこが今回の目的地、この果ての村だった。


彼女らは災害で投げ出された人々を保護して、

安全な地域へと非難させる活動などもしていた。


チエリが目視で何かをとらえて叫んだ。

「村です! 村民も数名見えました!」


それを聞いたメイも答える。

「よし、いつも通りにキャラバンとしての活動から始めます。皆よろしくね!」


メイの号令を聞いて、馬車から顔を出した一人のあどけない少女、

「メイ、私に出来る事ある?」


メイは笑顔で答えた。

「もっちろん♪ 救助する中に子供が居たら友達になってあげてね★アン


少女の瞳は輝き、

「うん! わかった!!」

杏は喜んで返事をした。


やがてキャラバンは村はずれでマーケットを広げて”いつも通り”を始めた。



続く。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

四半妖精の少女 笠置エナ @ena-kasagi509

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る