第36話

 「…んん…?」


耳もとでなる騒音で彼女は目を覚ます。意識がはっきりしないまま夢中でアラームを止め、動きが止まった。もう少しぐらい…。


 「…んん…?」


再び耳もとで騒音が鳴り目を覚ます、だが今度はアラームの音ではない。横になったまま画面を見ると、青井という文字と電話番号が表示されていた。せっかく寝てるのに…。


「…はい」


寝起きの声で電話にでた。


「小野さん?」


「…うん」


「青井たけど」


「…うん」


「今十時二十分なんだけど…」


「…え!」


すごい勢いで体を起こした。


「もしかして寝てた?」


「うん。ごめんなさい、すぐに行くから!」


電話を切り、慌てて立ち上がった。バッグを引っ掴み、急いで部屋を出る。アラームをかけたのに、二度寝してしまったら意味無いじゃない!自分に腹を立てながら青井のところへと向かう。


「ごめんなさい!どのくらい待った?」


「三十分くらいかな」


かなり待たせてしまった…。


「本当にごめんなさい…」


「気にしなくていい。それより、鍵かけてきたか?」


「え?」


何のことを言っているのかわからない。


「…どこに?」


「部屋に」


「…あ!」


「待ってるから、かけてきたら?」


「ごめん、すぐに戻ってくるから」


彼に背を向け、旅館に向かって走り出す。本当に何をやっているんだわたしは…。


 結局予定より、三十分遅れて寺に着いた。住職さんと霊媒師さんに謝らないと…。涼華がそう思っていると青井が話しかける。


「そんなに気にしなくていいし、謝る必要もない」


「え?」


驚いて彼の顔を見た。


「弟には十時から十一時の間に行くって伝えてあるから、遅刻したわけじゃないんだ」


「そうなの…?」


ちよっと安心する。

 

 昨日と同じく寺に着くと住職が出迎えてくれる。


「よお」


青井が昨日の様に言う。


「そろそろ来る頃だとおもってたよ」


そう言うと涼華の方に向き直った。


「少しでもお役に立てればと思っております」


「こちらこそ、よろしくお願いいたします」



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