第13話

 あの大きな門を目指しながらこの後の予定を考える。予定といっても五時を過ぎているので、どこかに行くというよりは商店街で買い物をするくらいだ。せっかくだから夕食も食べようかな。少しずつ現れてきた門を眺めながら商店街の様子を思い浮かべる。きっと昼間と同じくらい活気がある、根拠はないがなぜか自信があった。


門をくぐり振り向く。また絶対に来るからね。心の中でそう呟いた。もちろん門からは返事は無い、でも彼女には桜城址公園の物全てが感情があるかのように生き生きと見えた。小さくうなずき前を向いて歩き始める。


 帰りの道は暗いが心細いということは無かった。街灯が立っているし、周りは彼女と同じくお城の見学を終えた人がたくさん歩いていたからだ。みんな楽しそうに話したり笑ったりしている。商店街に近づくにつれお店の音なども加わり、さらに賑やかになった。


角を曲がり大通りに出る、すると一気に明るくなって目が眩んだ。予想していた通り昼間と同じくらい活気がある。予想していたとはいえ実際に目の前にするとちょっとびっくりしてしまった。しかしすぐに平静になり商店街を歩き始める。何を買うかは決めていない、とりあえず一軒一軒外から見て気になったお店があれば入る、そう考えていた。


しばらく行くと服屋が目に留まる。服か…。喫茶店で見た光景が思い出されれる。窓から見えた同年代くらいの若者たち、自分よりもずっとオシャレで輝いていた。わたしもかわいい服を着ればあんな風になれるのかな…。そう思うもなかなかお店に入ることができない。


彼女の中に自分に合う服を選べるかわからないという思いもあったからだ。悩んだ末に今日は買わないことにした。次来た時は入れればいいんだけど…。少し落ち込んで歩きだす。髪型も服も、わたしは何も決められないんだな。


顔を上げ、なんとなく近くにあった本屋を見た。するとあるものが目に入り落ち込んでいたことなど忘れてしまった。あるもの、それは人だった。若い男性が一人、本屋から出てきたのだ。彼女はその人に見覚えがあった。


本屋を離れどんどん先に行ってしまう。無意識に足が動き男性の後についていった。

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