二
「探して欲しい物……?なんだ、それは」
左助は待ってましたと言わんばかりに、私の問いに答えた。
「白い牡丹です!」
「……は?白い牡丹?」
我ながら馬鹿げた声が出た。まさか左助からこの言葉が出るとは思ってもいなかったから。白い牡丹など、この山のどこにもには咲いていない。
「はい。白い牡丹です」
「……左助、お前は何を馬鹿げたことを言っておる。そんな物、この山に存在する訳が無いだろう。百年近くこの山に居るが、私は見た事が無いぞ。それを探したいなら村から離れた方が良いぞ」
両手を軽く広げ首を傾けながら私は半笑いで言う。その反応に左助は悲しげな表情をするが、
「この山で見つけたいんです!」
威勢よく口走った。私はそれに構わず先刻と同じ様に続けた。
「そもそも、何故そんな物を探そうとしているのだ?それを見つけてどうする。……何がしたいんだ?お前は」
左助は私の問詰めに口をパクパクしている。
彼の目からは今にも大粒の涙が零れ落ちそうになっていた。
「……まあ良い。少しだけなら手伝ってやろう。ほら、泣くな」
この程度で泣くと思っていなかったものだから、私が早口で慰めると、左助は大きな音を立てて鼻を啜る。それから少し震えた声で、「本当ですか?」と上目遣いに言葉をもらした。
「勿論だ」
言ってから、しまった!しくじった。後悔の念が脳味噌に溜まって行く。
子供からあの上目遣いをされると断れないのが私である。別に、他意は無い。決して不純な事などは考えていないが、まあ、可愛くはある、よな。
だから勢いでこの馬鹿げた探し物にも手伝うと言ってしまった。きっと馬鹿なのは私なのだろう。
四季廻々 花楠彾生 @kananr
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