最終章 ???の目
まぶしいなぁ。
そんなに照らさないでよ。
光が目に当たってよく見えないじゃん。
「ミユ…」
ははは。馬鹿だな。
僕のこと、ミユだと思ってる。
確かに外側はミユだけど。
中身は違う。
「お願い。コウイチ。助けて。ころんで足が動かせないの」
コウイチはきりっと顔が引き締まる。
「よし、ちょっと待っとけ」
かっこいいなぁ。
なんであの時は今みたいにかっこよく助けてくれなかったんだろうと思ってたけど。
そういうことだったんだね。
僕を背負う。
あの事件があった時、一番深く心に刻まれたのが、ミユだった。
ノブヒトは論外だった。コウイチに取っては計画が思いの外成功した形だった。
フミアキはまだ未熟で、自分が背負うことさえできなかった。カオルはその場にいなかった為、罪悪感が少なかった。
ただ見守り、言われるがままに隠蔽を済ませたミユは、自分の知らないところで僕を生み出した。
だから、本当の僕じゃない。
架空の存在だ。
だが、今は僕はこの体を自由に使う事ができる。
さてと。
勇者ごっこのプレイヤーは残り一人。
お姫様を携えて、見事に城に帰るところだ。
おめでとう。
朝日が昇ってくる。
やがて山道をくだっていく。
朝日に照らされた道を歩き続ける。
バス停が見えた。
安堵感が胸の中に溢れてくる。
背負っているミユを見る。
ミユも微笑みかける。
やっとバス停に辿り着いた。
周りには誰もいない。
疲労感と安心感が胸に湧いてくる。
僕は彼の体をぎゅっと抱きしめて、
ミユの声じゃない、
声変わりのしていないあの時の声のままで。
耳元でこう言う。
つ か ま え た
クローゼットの闇 微糖 @Talkstand_bungeibu
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