お開き
香織さんは話し終えると灰崎氏の顔を心配そうに見ていた。灰崎氏は手を組み、少し暗い顔をしていた。
「私、あなたと結婚できて本当によかったと思ってるんだから」
香織さんがそっとほほ笑むと、灰崎氏は微笑み返し、
「ありがとう。僕も君と結婚出来て幸せだ」
と言った。
「じゃあ、後片付けは私がやるわ」
そういってキッチンに消える香織さんを見送ると、灰崎氏は視線を落とした。
その視線の先には年季の入った結婚指輪が鈍く光っている。しかし灰崎氏はその滅多に外すことのない指輪を外すと自身の指をそっとさすった。
そこには真新しいあざがくっきりと浮かんでいた。
エンゲージリング 藤間伊織 @idks
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