第5話 県陸上競技大会開幕!


 

 ◇ ◇ ◇


  彼は今、新入生の中で一人だけ陸上部の先輩達とコミュニケーションを取っています。

  先輩達は全員で10名ほどで皆が美少女で話も面白い。どうやら彼の前世から来る心配は杞憂のようです。

 

  ああ、彼以外の約30名はグラウンドで走っています。これまで見たことの無い真剣な表情で。

  

  何でも部室の広さ的に人数オーバーのようで全員入部というわけにはいかなかったようです。



 

 ――え?彼ですか? 彼は即入部が決まりましたので先輩方の歓迎を受けています。彼女たちも反対しなかったので優しいですね。(とぼけ)



 

 さて、新入部員が決まるまで時間があるのでそんな美少女な先輩方の紹介といきましょう。


 

 まずはこの方。エントリーナンバー1番。佐藤先輩。

 高身長黒髪美少女の彼女は陸上部部長で3年生。

 部長らしく皆をまとめるのが上手で練習熱心。成績も良いらしくまさに文武両道な人です。


 次はこの方。エントリーナンバー2番。斉藤先輩。

 ポニーテール美少女の彼女は陸上部副部長で2年生。

 部長とは違ったまとめ役であり彼女の雰囲気からか気軽に接しやすい人です。


 次はこの方。エントリーナンバー3番。小林先輩。

 ギャル系美少女の彼女は部内で一番の短距離走者で2年生。

 相手のパーソナルスペースに入るのが上手であり、男相手にボディータッチをしても嫌がられない事で有名な人です。

 

 

 ――この辺で終わりましょう。一気に紹介しても覚えられませんし。


 ――べ、別にこれ以上紹介するのが面倒くさいだとか思って無いんだからねっ?! かっ勘違いしないでよね()






 

 

  ふぅ。どうやら新入生の戦いが終わったようです。


  なるほどなるほど。どうやら知り合いは七海さんだけのようですね。


  一緒に切磋琢磨できれば良いですね、頑張りましょう!! ファイ!オー!


  



 ◇ ◇ ◇


 

  さて、ついに来ました県陸上競技大会。

  彼、橘俊介は男子短距離部門の100m走、200m走に出走します。

   ついに日々の成果を見せる時が来たようです!


 

 ――え?時間を飛ばしすぎじゃないかって?


 

   そこはご了承ください。この物語の趣旨は陸上大会なので。

 つまりはここからが本番、なのです!


 

  というわけで始まりました県陸上競技大会!地区代表をかつ進んだものだけが出場、競い合う場!全国へ向けて各々が自己ベストを尽くすことを期待します! 本日は幸いにも天候は晴れ、暑すぎず寒すぎずのまさに絶好の陸上日和です!


  


 ◇ ◇ ◇



 入部してから約3か月。新しい仲間と競い合い、励まし合い、努力し合い、切磋琢磨し、時にはえちちなハプニングに見舞われながらもついに今日、彼は大会を迎えた。

 

 

 「私たちの学校のスペースはここだから出番前にはそれぞれここにいるようにね」

 

 「「「「「はい!」」」」」


 

 学校のバスによって大会が行われる競技場に着いた彼らは、配られた用紙を見ながら学校ごとに指定された休憩スペースにいた。ここは競技場の裏側にあり、選手用の控室のようなものだ。選手たちは学校ごとに合同でスペースが割り振られており、出場選手のみの空間になっている。


 スペースはブルーシートに天幕が張られている要領で確保されていて、他校の知り合いがいる人は手を振ったりしている。そしてここから少し外に出るとウォーミングアップ用のコースがあり学校ごとに最終チェックを行ったりもできる。


 そして全員が荷物を置き点呼を取り終えると全員が競技用ユニフォームに着替えだした。

 ユニフォームはそれぞれ女子は上は半袖にしたは膝より少し上程度のスパッツ、男子は上は胸の下ほどの長さしかないタンクトップに下は足の付け根ほどしかない短いスパッツだ。完全に別の意図を感じる形状に彼も苦笑いだ。


  

 『…………よしっ、着替え完了っと』

 

 

 周りで女子が着替えている中、大して恥ずかしがる事無く着替えを終わらせる。

 わざわざ着替えるためにトイレに行くのは面倒だから、と彼。

 

 この前世で男子にとって当たり前の行動は今世ではどう考えても異常だった。

 彼女たちにはどうしようもなくご馳走だった。


 

 「「「「「っ!!」」」」」

 


 「ちょ……」


 「えっ……」


 「まじで……」

 

 「秀介君……えっろ」


 「くっ……! 今日まで頑張ってきてよかった!!」



 周囲のそんな声は聞こえずともこれまでの培った経験で、皆が自分を見て良い反応をしていることが分かったので彼は率直に言って興奮していた。これまでの日常生活で感じる熱い視線とは若干異なり、何というかもっとこう、深い粘着質な視線を感じた。


 

 『いや……さすがにこの服装は恥ずかしいわ』


 『委員会とかどうなってるの? これほぼ裸だよ? そりゃ風の抵抗は減るだろうけどさぁ……』



 前世でこの姿の女子相手に好き放題して挙句『減るもんじゃないし!』と言っていた人物とは思えない発言。

 どうやらここにきてやっと彼女たちのことを理解できたようです。



 『まあ……悪くないけど』



 訂正。やはり彼はゴミでした。即刻処分すべきでした。

 むしろ今からでも露出魔として処刑すべきでは?


 しかし残念、この世界では痴漢する方ではなくされる方な彼。さらにはその美少年顔では見た側触った側が犯罪になってしまうのです。ああ、何て理不尽な。


 つまり彼はわざとエロい格好をして往来を歩き、これ幸いと痴漢してきた相手のことを犯罪者として捕まえることができるのです。これは何て愉悦でしょう。快感でしょう。さらには相手がおさわり厳禁でもこちらはおさわりokなのです、それこそ彼はイケメンなのですからこちらに熱い視線を送ってくる美少女相手にいきなりキスをかましても問題ないのです!ああ何と素晴らしい世界!



 

 閑話休題落ち着きましょう



 そういうわけで彼は周りからの視線に愉悦した後、より強い愉悦を求め辺りをぶらつくことにしたようです。

 七海ちゃんと。



 『よっ、暇だから散歩しよー』

 

 「……っ、いいよ」



 七海ちゃん、彼の前に撃沈ッ!いつも冷静な彼女でも彼の刺激には耐えられなかったようですッ!

 現に今も彼が愉悦しているとは知らず、顔からお腹、太もも脚へと視線をチラチラ送っていますッ!

 

 彼は勿論気づいていますッ!気づいていて七海ちゃんの反応を楽しんでいますッ!そう、それは前世のビッチのようにッ!かくなる上はボディータッチをさせるのみッ!これで本物のビッチになれるでしょうッ!



 『 (歩きながらさりげなく近寄り彼女の手を自身の太ももに接触させる) 』


 「っ!ご、ごめん!わざとじゃないから!」


 『ん? ああ大丈夫だよ』


 「う、うんっ」


 『……』


 「……」


 『 (愉悦) 』



  これに彼は『くぅ~!!普段清楚で凛としている美少女が自分の一挙手一投足であたふたする姿は実に良い!たまらんです!!』と彼女の反応に満足。

 

  対する彼女は「い、いま、俊介のふとももに触っちゃったっ……も、もう一回触りたいなぁ」「やっぱりみんな俊介の事見てるなぁ。まあ俊介はカッコいいしいい匂いだしスタイル良いし性格もいいから当然だよね」「はあ無理ユニフォーム姿エロ過ぎでしょ……」と心中慌ただしかった。

 


 彼がこのスペースに来て数分、既に出場選手間の話題はどの学校も彼のことでいっぱいだった。

 

 曰く、見たこともないようなイケメンがいる。

 曰く、歩くたびに周りの視線を総なめしている。

 曰く、ユニフォーム姿がどちゃシコ。

 曰く、ハフハフしたい。

  


 

 


 ――陸上大会は未だ始まってすらいなかった。






 ☆ ☆ ☆

 

愉悦:心から喜び楽しむこと。愉悦とはすなわち煩悩の喜び。

   by某黒幕系神父

 

 

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女性から性的に見られやすい世界で やまいし @yamaishi_913

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