Winter cold and reconciliation scenarios|冬の寒さと和解のシナリオ

 彼女はまだ窓際のソファーでスマホをただ見つめてるだけ。あれからたったの3時間しかたっていないがどちらも口を開こうとしなかった。きっかけは本当に些細なことで、同棲を初めて半年が経ち、生活も落ち着いてきた頃に、「この冬はこれで乗り切るんだ」と6万円もするダウンを買ってきた事をニコニコと報告してきた事がきっかけだった。その前の月に、夏になったら旅行に行こうと貯金を始めたばかりであった事や、それが原因で、折半で支払っていた家賃を今月は多めに払って欲しいと言われたことに私が腹を立てた。極め付けは、私も彼女も生理の時期が被っていたこともあり、口論が激化した。


 大雑把で、ガサツな彼女に比べて、私はどちらかというと口うるさい奥さんのようなタイプで、日頃からお金の使い方などでガミガミと言っては、その様子を他人事のように彼女はケラケラと笑っていた。その他にも、シャワーの時間が長いことや、いろいろな部屋の電気をつけっぱなしにしていること、ドライヤーや携帯の充電器などのコンセントが挿しっぱなしだとか、色々とガミガミ言っては、ついて回っていた。


 今までで最大の大喧嘩をしたのにも関わらず、お互いにリビングから出ていかないのは、数年ぶりの大寒波が理由だった。3部屋ある中で唯一エアコンがついているのがリビングのみで、たとえ大喧嘩をした相手と一緒に過ごすことになったとしても、他の部屋で凍えるよりもマシだと思えるほどだった。ご飯もお風呂も別々で済まし、夜も更けてきた頃。彼女は一人、この家で最も寒い寝室に行ってしまった。部屋を後にする彼女の後ろ姿を見て、今日初めて胸が苦しくなって、自分も日頃からガミガミ言いすぎていたことや、たった一度の買い物で私も言いすぎたと反省した。いつもは湯たんぽを持って寝室に行く彼女が何も持たずに寝室に行ってしまったので、私はやかんで湯を沸かし、湯たんぽを持って寝室に向かった。


 リビングを出ると、温まった体がみるみる冷えていく。寝室に入るとすでに彼女はベッドに入って、寒そうに体を揺らしている。私は彼女の足元に湯たんぽを入れ、ベッドに入ると彼女に身を寄せた。すると彼女は、振り返って「ふふ」とニヤリとして見せた。私は彼女のシナリオに乗っかったみたいだ。足元にある湯たんぽが足先を温めるよりも先に、胸がフワッと温かくなった。

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暮れる日も、明ける日も。 @seiji_iwanari

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