今を生きる僕たち

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今を生きる

「死にたい」それが僕の口癖だった。


何か嫌なことがあるごとに「死にたい」と言い続けてきた僕は、今の自分が嫌で嫌でしょうがなかった。


自分でもわかっているのだ、しかし僕は"現実”から逃げているという事を自分でわかっているうえで、「死にたい」という言葉に逃げているのだ。


自分を変えたい、変わりたい、そう思っても別に今のままでもいいやと逃げている自分が嫌になってきた。


そんなことを繰り返しているうちに僕は一つの結論に達した。


自分でも何も変われないなら、もう死んでしまおう。


そう心に決め僕は放課後にもう誰もいないであろう屋上に向かった。


うちの学校は屋上の鍵が壊れたままであり誰でも入ることができるが誰もそこを訪れない。


理由は単純だ、汚いからである。誰も掃除しないので屋上はものすごく汚い状態であった。


そんな屋上を目指し階段をのぼる。その道中今までのことを覚えている限り思い出し、そしてこれで終わりだと思い屋上の扉を開けるとそこにはすでに先客がいた、彼女は手すりの上に乗って誰も、何もない校庭を眺めていた。


僕はこの時間に人がいることを考えていなかったのでどうすればいいのかわからなくなった。


その時彼女が僕の方を見てきて驚いたように、


「こんな時間に人? 珍しいね」


まるでいつもこの時間にここにいるかのように言ってきた。彼女は続けて、


「屋上になんか用?」


いきなり質問され僕は反射的に、


「じ、自殺するため?」


気が付けば自分の目的を見ず知らずの人に言ってしまった。


一人で誰にも知られる前に死のうと思っていたのに僕はそのことをしゃべってしまった。


それに対し彼女は、


「じゃあ、試してみる?」


と言い手すりからおり僕の近くに来て、僕の手を引っ張った。


そして彼女に引っ張られるまま僕は手すりを超え屋上の縁に立っていた。


後はここから落ちるだけだが、僕は落ちることができなかった。


それを見た彼女は僕に、


「どう? やっぱり死ねないでしょ」


と一言。僕は縁から去りそして彼女に聞いた、


「まるで僕が死ねないみたいに言ってたけど、どうして?」


純粋な疑問だった。自殺したいといっても本当に死ねる人、土壇場になって死ねない人、様々といる中で彼女は僕が土壇場になって死ねない人であると見抜いていたのだ。


その質問に彼女は、


「昔の自分にそっくりだったから」


「昔の自分……?」


彼女が放った言葉『昔の自分』僕はこの言葉の意味を知りたいと思った。どうしてそう見えたかを聞こうとする前に彼女が、


「昔ね、自分のやってることが嫌で嫌でもう死のうって思ってたのにね、死のう死のうって思っても死ねなかった。いや、死ぬのが怖かったのかもしれない」


そう彼女が言い僕は静かに聞いている


「でもそんなことを繰り返してたら気が付いたの、まだ何かしたいから、まだ生きたいからだから私はまだ死ねないのかもしれない」


僕はそれを聞きそっと今までのことを思い出しながらまだやり残したことは何かを考えてみたが、だけど何もなかった。そう考えていると彼女は、


「でも私はまだその何かやり残したこととかがわからないの、おかしいよねこんな事言ってるのに当の本人は思い当たることが何もないんだよ」


どこか悲しんだ声で言ってきた。


僕は彼女の言葉を聞き一つやりたいことできた。そのやりたいことをやるために僕は彼女に、


「じゃあ、これから一緒に生きないか?」


彼女は不思議そうにこちらを見てきた。


それもそうだろうさっきまで死のうとしていた知らない人にこんなこと言われても了承しないだろう、


しかし予想とは裏腹に彼女は了承し、


「それじゃ、これからよろしくね」


と一言。


この日から彼女との新たな日々が始まり不思議な関係が始まっていった。

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