snowy blue
幾日経ったのだろうか。それは妙に暖かい日であった。尼港にて額にほくろのある男が東京からロシア帝国の財宝が発見されたとの旨の電報を受け取った。一日に打たれたはずの電報を陸軍が男に渡すのを拒んでいたらしい。陸軍はロシアを復興させることで新たな敵を創出し、それに対しての予算を要求する腹積もりなのだろう。その晩、男はまだ春の来ていないシベリアを横切る列車に乗り込んだ。
1/30 in Minsk
前日からの猛吹雪で一行はミンスクに張り付く羽目になった。私の正面に座る銀髪の女は猫舌なのかさほど熱くはないココアをちびちびと啜っている。窓の外に目を移すと先週の叛乱の爪痕が生々しく残る貧しい街は戦死者の亡骸を燃やしているようで、外の見えない夜の窓には雪に加え窓には灰が張り付く。スラブ人のゲルマン人によるささやかな抵抗だったのだろうか、他に空き部屋は多くあったが4人に割りあてられたのはベットの3つしかないすきま風の冷たく流れる北向きの部屋であった。またその部屋は狭く、そのせいか小太りの男は軍服を着た男たちの方を気まずそうにご機嫌を伺っている。私が小太りの方にくつろぐように促すと、申し訳なさそうに背もたれにもたれかかる。そして男は隣に座る娘に「リリィ、もう寝なさい。」というが透かさず彼女は、「ドイツの男の前で寝たら何されるかわかったものじゃないわ。」とこちらを挑発する。私の右に座る部下は顔を今にも破裂しそうな程に赤くしていたが私が咳払いをすると存外素直に食い下がった。依然不機嫌そうにローラント中尉は「少佐殿、先に休んでも?」と問う。私が許すと彼は窓際のいちばん小さなベッドで6フィートを優に超える体を折りたたんだ。「私も眠るわ。」と女は言い、細い体に似合わないのっそりとした足取りで先に寝た男から1番離れたベッドを選び横になった。テーブルには私と小太りのロシア人だけが残ることとなった。2人が寝たあと私たちが話したことを要約するとこうだ。
・吹雪は朝方には弱まり、この寂れた貧しい街から出れそうだということ。
・彼の率いるモスクワ総督府が財宝の所在地を突き止めたということ。
・その場所にレジスタンスの一団が展開しているということ。
どうやら荒事は避けられないようだ。私は彼が眠りについてすぐ、モスクワの駐屯軍将軍に連絡をとったのであった。
ベルリン悪魔の詩 @goodbyeAsay
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