エピローグ
つまるところ叔父さんは、俺が覚えていないのをいいことに、俺を弄び続けていたんだ。吊られた鱗もきっと何かの偽物で、全てが盛大なドッキリの、嘘で練り上げられた“釣り”。うざったいことに、釣られたのは俺の方だったんだ。
だけれど、不思議と嫌な気持ちにもなりきれなかった。なんなら、最初に釣られたのは叔父さんだ。俺が外に連れ出したんだし、俺のふっかけた言葉に釣られて、あんな約束をする羽目になった。それであんなに幸せそうに、あんなに格好良く、歳を取った。
俺はそんな考えを巡らしつつ、自分の体を眺める。デブになるよ、だなんて偉そうにせっついて喧嘩をふっかけたのは、どこのどいつだったろうか。
なんとなく、いつまでもゴロゴロしているわけにもいかなさそうな気がした。今年の夏は、久しぶりに何かしようかなと——スマホを開くよりも早く、俺は家のドアを開けて、散歩に出かける。歩きながら、夏の計画を考える。
まずは手始めに、釣りなんてしてみようか。
バツイチの叔父が人魚姫と結婚するらしい 巳崎怜央 @misakireo_
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