第10話 ばーちゃんの畑仕事

 ばーちゃんは土づくりから種まき、収穫までほとんど全てひとりでやっている。左足の脛の半分から下はぎそくなので、家から畑までの道のりはとても辿々しい足取りである。鍬を杖代わりに歩くときもある。そんなばーちゃんを見かねて手伝うなどとのたまった日もあったのだが、そんな心配はなかった。鍬を振る場合には歩き回るよりも上半身の動きの方が多いため、ばーちゃんのほうがよっぽど仕事が早い。ただし、苗や堆肥を運ぶなどの歩く仕事は苦手なので、運び屋に徹することにした。

 

 80代も後半にさしかかっていようが、農具の使い方は体に染みついているらしい。「若いもんには負けん。」だそう。玉ねぎの苗やら長ネギの苗など、運ぶ必要があるものをせっせと運び、その苗をばーちゃんがさっさと植えていく。ばーちゃんのすごいところは、「助かったよ」「おかげさまで早く終わってよかった、ありがとよ」などと、しれっと言えるところだと思う。働かざる者食うべからずだから手伝え、と言われてもおかしくない状況(家で何もしない居候)に対しても自然と感謝の言葉が出てくる。


 ばーちゃんのように、小さなことにも感謝できる、そして感謝を伝えることができる人間になりたい。

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うちのばーちゃん、ただのばーちゃんだけどなんかすごいから自慢したい ゆる先生 @lucky_cookie_secky

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