第35話 薬、暴力、◯◯◯


「ん、んーー……」


 目が覚める。

 そこには知らないようで知っているような天井が広がっていた。


 あれ、何が起きた?

 ここはどこだ? 

 

 朦朧としている意識が徐々にはっきりしていく。

 ここは学校の保健室だ。

 保健室のベッドに寝ていたのか。

 何が起きたんだっけ……?


 体を起こした瞬間、頬に痛みが走る。


「痛っ!!」


 なんか腫れている……。

 何が起きたんだ……?


 確か、理科準備室で変な煙を吸ってそれで……思い出せない……。


 頭を傾げていると。


「あ、松原くん目が覚めたのね! よかった〜〜」


 月宮先生が現れる。


「先生……?」


「大丈夫? 意識しっかりしてる?」


「あ、はい」


 顔は痛むけど。


「よかった〜〜突然だったからびっくりしたよ〜〜」


 俺突然倒れたのか。

 そうか、少し思い出した。

 あの煙吸って意識が朦朧としてそれで倒れたんだ。

 だがしかし、なんで頬が痛むんだろう? 倒れる寸前先生が受け止めたからぶつけてないはずなのにな。

 考えていると月宮先生が顔を近づけてくる。


「え、ちょ、なんすか?」


「いいからじっとして」


 動揺する俺を制止し、月宮先生は俺のおでこに触れて体温を測る。


「んーん」


 月宮先生の手の温もりが俺の心臓の鼓動を加速させる。

 しかし、何だろう……。すごく……心がキュンとするのは当然だが、それとは別の感情が不思議と生まれていた。


 この鼓動は果たしてドキドキから来るものなのか……。


「……ハァ……」


「松原くん?」


「……ハァハァハァ……!!」


 過呼吸気味になる。

 な、なんなんだ! これは!!

 

 今俺を包む感情は大人のお姉さんと急接近している思春期のドキドキとは程遠いものだった。


 この場から逃げたい、離れたい。

 心がそう煽ってくる。


 それはまるで……。


 恐怖!!!


 その感情により俺の失っていた記憶のピースがはまる。


「うわぁぁぁぁ!!」


 俺は叫びを上げて、月宮先生を振り解いた。


 そうだ……思い出した……あの時!


……………………


「ああああ」


 女体に触れられたことで理性が暴走し、俺は本能の赴くままに行動しようとしていた。


「松原くん!? キャッ!!」


 先生を押し倒し、襲おうとした。


「おっ◯い!!!!」


 しかし………。


「やめなさーい!!!」


 ブン!!!!!


 鈍い音共に頬に激痛が走る。


「ブハッー!!!!」


 想像以上の痛みで、一瞬正気に戻った。


 普通女性が男を叩く時、パーを想像するが、月宮先生は違った。


 グーだった。


 それも殺意が籠った拳だった。


 その"黒閃"のような一撃をくらい俺は倒れたのだ……。


 ……………………


 全てを思い出した……。

 この先生はやばい……。

 媚薬を作るし、それに暴力性も持ち合わせている。見た目はほんわかな女性だが中身は完全に闇の人間だ。

 関わったら大変なことになる。

 俺の全神経がそう危険信号を出していた。


「た、体調も戻ったのでお、俺はここで失礼します……」


「あ、ま、松原くん?」


 逃げるように俺はその場から離れようとした。

 怖いというのもあったがそれ以上に懸念すべきこともあった。


 一番まずいのは"あの女"が月宮先生の内情を知ること!!

 あの二人が共に手を取りあってしまったら俺の学校生活は……完全に終わる!!


 何としても月宮先生と"あの女"の接触は避けなければならない!!!


 それが今俺に課せられた使命だ!!!


 その決意を胸肉保健室を出よう扉を開けた。


 その時———。


「……くくく」


「あ、ああーー!」


 扉の先に俺にとってのもう一人の悪魔が立っていた……!!

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R18から始まる性春ラブコメ ななし @nayuta1208

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