イケメン税

#365日ショートショート 252

　イケメン税の導入は秒読みだった。

　完全なる平等を追い求める日本社会。生まれながらの美醜格差を埋めるには、美なる者に税を課さなければならない。今まさに、審議は大詰めを迎えていた。

「ちょっとお待ちください」

　そんな折、野党議員席より手が挙がった。

「私は、イケメン税に代わる案として、ブサメン給付金を提案します」

　場がどよめく。まさかそっちの調整で平等性を保つとは。

　野党議員は続けた。「よろしいですか。この美醜格差解消計画は、多くの国民の反発を招きます。しかし、真の平等を目指すためには成し遂げなければなりません。我々こそが、目先のことに囚われず、どっしりと構えて大局的な判断を下すのです。つまり、国民感情をうまくコントロールしながら導入する必要があります」

「それはどういうことかね」。どこからともなく声が上がった。

「我々が、ブサメン給付金の受給を辞退するのです。議員全員が辞退する旨を含めて、国民にこれを発表します。そうすれば、国民の多くは納得を覚えて……」

　その演説は遮られた。真の平等を目指す者たちから、怒号が飛び交ったためである。