第18話(最終話)現在
雨の降る日は、猫の集会所(私の家の一番前の部屋)の猫たちは、外へ出てもすぐに戻ってくる。だから、午前三時に出入口を閉めることができる確率は高かった。
でも雨が降らないと、やはり三時を過ぎても戻ってこないやつがいる。
そこで、一匹か二匹戻ってこなくても、一旦出入口を閉めることにした。
猫の集会所の横に、別の出入口と通路がある。そこから時々外をうかがって、猫が戻ってきていたら中に入れてやった。
気がかりは、ほかの猫たちと血縁関係にないハチワレだった。出入口を閉めたら、出してくれとばかりに鳴いたハチワレが、このところ集会所に来ている形跡がない。
ハチワレは、ほかの猫たちと違ってゲスト的な存在だった。ほとんどキャットフードを食べるためだけに集会所に来て、それ以外はほかのどこかで過ごしていることが多い。
そしてボス猫的存在でもあった。入ってくるとほかの猫を威嚇し、追いかけることが多いので、私が仲裁に入ることもたびたびあった。
前のボスだった茶トラ猫も、このハチワレに追い出されてしまったのだ。
そのハチワレが、このところ集会所に来ていないようだ。争う音がしないから、間違いないと思う。
ハチワレが来ないのなら、夜に出入口を開ける必要がないんじゃないか?
そこで私は、出入口を閉めっぱなしにしてみた。猫たちは、最初のうちはブーイングしていたが、そのうちに慣れてきたようだ。
もう来ないと思っていたハチワレだが、一応毎晩外へ見に行ったところ、ある日家の前でちょこんと待っていた。
私は「ごめんな」と言ってキャットフードをあげた。ハチワレは爆食いするでもなく、普通の量を食べてどこかへ行ってしまった。
太り気味だった彼は、特段痩せた風でもなかったので、きっとどこかほかの家でも食べさせてもらっているのだろう。あまり人を怖がらないやつだから、きっと。
閉鎖空間で暮らすことになった集会所の猫たちの中に、黒猫で尻尾の極端に短いやつがいる。黒猫ばあちゃんの一番上の孫猫で、尻尾がゴリラみたいに短いことから、私は『ゴリ』と呼んでいた。日向ぼっこ以外はほとんど外へ出ることがない、インドア派のやつだ。
後日ゴリラを検索してみたら、ゴリラには尻尾がなかったので、完全に私の命名ミスなのだが。
その『ゴリ』が、後輩の兄弟に喧嘩を吹っ掛けるようになってしまった。もっとも、フーと唸るばかりで、逆に後輩から追い回される始末だ。
負けるとわかっているのに、なんで目が合うだけで唸るかなあ。おかげで『ゴリ』の唸り声が聞こえるたびに、仲裁に入らなければならない。
集会所の猫たちは、いずれほとぼりが冷めたら、読者の方からいただいた貴重なアドバイスを元に、ときどき外へ出してやろうと思っている。
三代目家猫の『チロ(チロル)』は、やたらと膝や腹の上に乗ってくるようになった。それは良いのだが、着ているものに爪を立てて、その爪の引っ込め方を知らないおバカさんだから、服が傷んでしょうがない。
『なめこ』は、相変わらず私を「舐め回し」の刑に処する。
『ハチコ』の五匹の子供たちのうち、未だに見分けのつかないサバトラ二匹のうちの一匹は、必ずタンスに上って私の頭をポンポン叩くので、名前を『ドンマイ』にした。
これが現在までのところだ。
書かなかったエピソードもあるし、これからも色々とあるだろう。でも、これでこの話も一旦終わりにしたい。
心配なのは、子猫たちが虹の橋を渡るその日まで、私が生きていられるかどうかだ。勿論その日まで、入院することもできないし、病気・怪我も厳禁だ。交通事故にも気をつけなければならない。
もしもの時に、猫飼い仲間にあとを頼もうにも、私より年配だからなあ。
大丈夫だろうか、私・・・。
猫を飼っている方、これから飼おうと思っている方、どうか健康には気をつけてください。あなたの帰りを待つ猫ちゃんのために。
第10話の最後で「複数飼いはお勧めしません」と書きましたが、本当にせいぜい二、三匹までにしてください。私みたいになりますから。
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皆様にたくさん応援していただき、無事に連載を終えることができました。ありがとうございました。
特に JOY POP さん、貴重なアドバイスをいただき、とても嬉しかったです。本当にありがとうございました。
例によって、チロルの写真です。
↓
https://kakuyomu.jp/users/windrain/news/16817330648597749987
猫なんて飼うもんじゃない @windrain
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