第6話 挑戦
「マリア、大丈夫だって。」
ファット先生が俺に伝えてくれた。
ふぅ……。
誰にも取られてなくてよかった。
マリア先生は結構忙しいそうだから、なかなか許可を取りに行く機会がなかなかなさそうだった。
「明日学園に戻るから、覚悟しといてよって、マリアから。」
実は、マリア先生はかなり強いらしい。
現在ランク2位のチーム「蒼門(アオノゲート)」のリーダーだ。
今まで、先生について気にはなっていたが、聞いてみようと思うほどではなかった。
俺の中では1番お気に入りの先生ではあるが、実際他の生徒から見るとそうでもないと思う。
マリア先生と俺の戦い方が似ているから、アドバイスが的確でかなりわかりやすい。
専属の実践練習担当がいつまで続くのかは、マリア先生次第ではあるが、当分お世話になるだろう。
厳しく指導してもらおう。
---
そして、次の日ついにマリア先生専属の練習が始まった。
これまでの基礎練習とは違って、基礎を応用する練習がメインになってきた。
もちろん、まったく基礎をやらないわけではない。
基礎を忘れては、応用ができなくなる。
今日先生から教わったのは、主に2つ。
一つ目は、相手の剣に合わせた後、次どのように動くか。
合わせた後、相手が攻めに回った場合は、
剣を振りかざしたところに、合わせたまま距離を詰めて、振り切らせず、力を殺す。
自分が攻めの場合は、剣を合わせたまま少し距離を取って、剣を振りかざさず、手を支点にして、剣先に力を伝えて、素早く切り下ろす。
二つ目は、相手の力が極端に強い場合。
前の2位の相手と戦うような状況だ。
しかし、前回のようなスピード勝負では通用しない場合もある。
相手が速さに慣れていて、動きを目で終えていれば、別の手段を使わなければならない。
大抵は、相手の力が強いなら、その力を自分の攻撃に利用する方法を使う。
この場合の戦術は、相手と剣を合わせる動きを取るのが重要だ。
もちろん、正面から合わせに行けば、即死だ。
だが、自分の軸を少しずらしておけば、合わせる瞬間に、相手の剣の軌道から体の位置をずらすと、空回りさせることができ、守りから攻めに変えられる。
これらを先生と実際に剣を交えながら教わった。
難しいようだが、思ったよりできる。
後は実戦で利用できるかだ。
こんな充実した授業を毎日続けていたら、上手くならないようにする方が難しい。
やっぱり、持つべきものはマリア先生だな。
これまでマリア先生と剣を交えてきて、本気で相手してくれたことは、多分一度もない。
練習のために俺に合わせてくれている。
先生の本気が見てみたい。
よし、先生に対戦を申し込もう。
実際、勝てる気がしない。練習中、俺がどんなに本気で戦っても、いつも表情一つ変えず、冷静だ。
今日は、先生は帰っただろうし、もう暗くなってきていて、勝負はできない。
生徒たちも、練習を終えて、ぞろぞろ帰っている。
明日にしよう。
家に帰ろうと思っていたが、ファット先生を見つけた。
明日、マリア先生と戦うつもりということもあり、ちょっと情報を聞いておこう。
何もない状態で戦うのは、ちょっと怖いからな。
「ファット先生!」
「どうした、まだ帰ってなかったのか。」
「明日、マリア先生に対戦を申し込む予定なんですけど、マリア先生についてまだ何にも知らないので、何か教えてもらえませんか。」
「なるほど。
そうだね……、マリアはね、一言でいうと『俺より強い』。
実は彼女もこの学園の卒業生でね、1年生のころに『蒼門』にスカウトされてて、かなり優秀な生徒だったんだ。
なぜか、いつも本気で戦おうとしないけど、本気ならおそらくエマと互角にやりあえるくらいの強さではあると思うよ。」
そんなに強いのか。
でも、なんでそんな強さがあるのに、手加減するのだろうか。
「戦い方は、指導の仕方からなんとなくわかるかもしれないが、頭脳系だ。
感覚派の俺からすれば、何を考えているか理解できないね。
君ならもしかしたら、いい勝負ができるかもしれないね。」
予想通りではあった。
頭脳系。
2位のやつが、今1位のやつは頭脳系で何をしてくるかわからないと言っていたな。
これはちょうどいい実践になる。
本気を出してくれるかどうかは、わからないけど、なんか楽しみだ。
マリア先生に認めてもらいたい。
---
ベットに寝転がって1時間経過したが、未だに寝付けない。
心が不安定で眠れない。
楽しさ8割、恐怖2割といったところか。
とりあえず目を瞑っておけば、いつかは寝れるだろう。
そう思っていたが、結局朝になるまで、一睡もできなかった。
「眠い。」
隣国に大切な人を奪われたので、絶対にやり返します。~復讐するために努力たら強くなりすぎた~ 蒼 @rakke
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