エピローグ 発表会
「…以上が、池ができる前から秋まで、毎日ひとコマずつ撮った静止画を合わせて作った動画でした」
ユカリの説明が続く。会場から驚きの混ざった拍手が巻き起こった。何もなかった田んぼの隅っこの地面に、穴があき、大きくなり、植物が植えられ、水路がつながって水が満たされ、流れの部分に石が積まれ、色々な植物が繁茂し、生き物たちであふれていった様子が、すごいスピードで映っていったのだ。背景では天気がくるくると変わり、雲が日差しが流れるようにかわった。
池を造る時の苦労話や、例の事件、そして復活などの話の後、今度はクローズアップで池の中の生き物が映る。今度はマイコの出番だ。池の中を群れで泳いでいく地元のメダカ、モツゴや土壌などの小魚、透き通った川エビ、脚を波打たせて泳いでいく白いホウネンエビ、泥の中でせわしく動くカブトエビ、タマミジンコケンミジンコ、植物性プランクトン、積まれた石をひっくり返せば小さなカゲロウの幼虫やプラナリアも見える。そしてトンボの幼虫ヤゴも大きく育っていた。
「みなさんに配ったプリントに、生き物図鑑ものっています」
マイコからユウトにバトンタッチされ、今度は学校の色々な人達が池の周りで活動する写真が説明される。
「私達は6年生になって、田んぼの世話をする4年生や、用務主事の野村さんに池のことを引き継ぎ、池をますます良いものに、さらに学習に役立ててもらえるように活動しています」
大きな拍手とともに発表会は終わった。センター長の大沢先生が握手に来てくれた。
科学センターの発表会から帰って来て、6年生になったチームサイエンスは、また池を見にやってきた。
「ここの水路の池に入るカーブが、外側が流れに削られ、内側が堆積物で浅くなっている。これも6年生の川の働きの学習に使えるんじゃないかと、写真を見た大沢先生が言っていたんだ。さっそく松重先生に言ってみようかと思ってさ」
ユウトがやる気満々で説明を始めた。
「おい、ユウト、終わったら一緒に帰るぞ」
やがて校庭からキララの声が聞こえてくる。
「すぐ行くから、ちょっと待っててね」
ユカリが答える。あれ以来、キララもいい仲間になり、チームサイエンスの特別メンバーになって、みんなで楽しくつき合っている。
マサルは相変わらずうるさいし、ユリコは中学受験で忙しいらしい。マイコはまた好きな本を読んだりイラストを描いたりしながら、チャムチャムとおいしいお茶とお菓子でおしゃべりの時間を過ごし、時々はレベッカやオモチャ博物館に出かけたりしている。
「ただいま」
家に帰ってくるとママが、手紙が届いていると教えてくれた。
「あ、お婆様が、1年ぶりで帰ってくるんだわ!」
今年のゴールデンウィークは、とても楽しくなりそうだった。
<了>
ドールハウスのチャムチャム セイン葉山 @seinsein
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