現代アート展 🎨

上月くるを

現代アート展 🎨





 今年の夏は、たった一着の麻のジャケットを着通した。🧥

 ほかの上着も試してみたが、カフェの冷房は手強くて。☕


 化学繊維はどんなに見栄えがよくても、キンキン冷房に一時間も堪えられない。

 震えながら我慢して芯まで冷やしてしまい、結局、天然素材の麻に落ち着いた。

 

 ブティックにあったのは夏には不似合いな枯葉色……すぐシワになりそうだし。

 が、店長さんの「麻はシワと一緒に着てください」ですぐその気になり。(笑)


 なるべく汚さないように注意して着て、ひと月に一度ぐらい丁寧に手洗いする。

 こうしてひと夏が経過したら、シルクの光沢にも似たシブい味わいが出て来た。


 人の形に自然な丸みを帯びた感じ、いいいい、とてもいい、無二の親友みたい。

 来夏も、その先も、ずっとたいせつに着て、擦りきれるまで着こんでゆきたい。




      👨‍🎨




 残暑の日曜日、すっかり身体に馴染んだ麻を着て、知人のアート展を拝観した。

 市立美術館の小ホールいっぱい、墨、水彩、糸、木、土をつかった作品が並ぶ。


 凹凸の影を際立たせるため天井から照明を降らせ、特産の漆を贅沢につかい……。

 その一点一点に、作家の魂魄が、否、百八十センチの痩身そのものが宿っている。


 一地方の美術界で生きて来たアーティストの、長い歳月がひたひたと迫って来る。

 ほぼ同年代の仲間同士にしか分からない昂揚と絶望、希望と諦め&後世への贖罪。


 戦後七十七年目の現状からの脱出を祈りながら、個性的な作品群に囲まれていた。

 季節に先駆けた枯葉色のジャケットは、モノクロームの世界に歓迎されたようだ。

 


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