第4話 神の騎士団【4】
「でも、そろそろ…………ん? なんだか入口のほうが騒がしいでござるな」
倶利伽羅丸が何か言いかけたその時、一番最初に騎士団の入り口付近で何かしら騒がしくなっているのに気付いたようで。
それに反応したアシェル達はすぐに入口のほうへと目を向けた。
すると、騎士団の入り口の扉が少しだけ開いているではないか。
「やっと、試験の為に騎士団内に入れるのかな」
「いや、でも様子がおかしい」
アシェルがようやく、憧れの騎士団内へと入れるのかと期待を込めた声を出すが、それに対してルーカスが冷静な判断を下す。
ルーカスの言葉に、アシェルやアーリヤ、倶利伽羅丸が入り口付近を注意してみていたところ。
人が一人二人くらい入れる隙間が空いていた騎士団の扉が再び締まり、その後入り口前で誰よりも高い空へとふわりと浮かぶ人の姿があった。
胡坐をかいた状態で浮かぶその人物が着ている服は、青碧の騎士団の団服で。その人物が騎士団の団員であるのがすぐに見て分かる。
「見て! 青碧の団の団服だわ!」
アーリヤと同じ反応が、アシェル達の周りからもざわざわと聞こえてくる。
「――、ぁー、ぁー、あぁー、ああー聞こえるか? 聞こえてるな」
青碧色の団服が良く似合うシルバーの髪と青海色の瞳をした青年が、宙に浮いて自分の喉に手を当てて声を発すると、騎士団入り口付近から遠く離れているはずのアシェル達のところまで声が届いた。
周りの反応からして、騎士団の城壁内に入っている入団希望者達全員に、青年の声は聞こえているみたいで。
これほどまでの広範囲に声を届かせる魔法を簡単に熟すだなんて、さすが神の騎士団の団員だ。と皆、感嘆の声を上げている。
「これからお前達にはこの袋に手を入れて一本の紐を引いてもらう。その紐の先が光って騎士団内に伸びた者だけ、騎士団内に入れ。試験を受けてもらう。光らない者は騎士団には入れない。このまま帰ってもらう」
青碧の団の団服を着た騎士団員の青年の言葉に、周りに激震が走った。
それもそうだ。青年の今言い放たれた言葉を聞けば、くじ引きで運試しをして試験を受けるか受けさせないかを決めるという事なのだから。
「それはどういうことですか!?」
「大事な試験も受けれずに、運試しをして帰れって事ですか!」
「そんなの一方的すぎる!」
「せめて試験だけでも受けさせてください!」
アシェル達は黙って様子を窺っていたが、多くの試験を受けに来た人間が、青碧の青年の言葉を否定したり信じたくない気持ちで、精いっぱいの努力だけでもさせてほしいと願い込むが聞き入れてもらえず。
一方で聞き入れない本人は、あちらこちらから飛び交いぶつけられる言葉に、苛ついた様子で次の言葉を言い放つ。
「あぁ? なんだ? こっちのやり方に文句をつけようってのか? それならそこまででお帰り頂いて結構だ。ただの運試しすら掴み取ってやろうという気概はねぇのか? そんなくじやる勇気もねぇ肝がちっせぇやつは、自分に自信がねぇって言っているようなもんだ。そんな奴はこの騎士団にはいらねぇ。やり方に不満があるならとっとと帰って飯食って泣き寝入りしな」
青年から言い放たれた言葉に、それまで思い思いの言葉を彼にぶつけていた入団希望者達の声はピタリと止んだ。
それはそうだ。皆ここへ入団したいが為に来たのだから。
それまで、青碧の青年に思い思いの言葉をぶつけていた入団希望者達は、釈然としない様子ではあるが押し黙り、彼の言葉をのんだ。
アシェル達から見えない場所にもう一人近くに団員がいたのだろう。
静まり返ったその場の様子を見終えた青碧の青年は、下のほうにいた同じ団服の色が見える腕の持ち主にくじの入った袋を渡している。
そして、騎士団本部の扉が徐々に大きく開いていき、完全に開ききった後。
「それでは今からくじ引きを始める!! 近い奴から並んでくじを引いていけ!」
青碧の青年が響く声でそう叫び、アシェルの最初の試練、運試しが始まった瞬間であった。
BLACK MAGICIAN ~神の御使い達の正義~ 黒飴細工 @knram8
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