第3.5惑星からの侵略者

2017年7月3日

東京都 国会議事堂




「〜でありますから、この攻撃は他国によりものではなく、いわゆる地球外から行われたものと考えられております!」


自分でも自分の言っている事が信じられない、宇宙人の侵略が起きた上にそれにそいつらが中世風の魔法使いだなんて誰が信じるんだ。

これだから国会答弁は嫌だったんだ、俺は官僚なのに。

しかしそれはあの宇宙船を解析して判明した事なのだから仕方がない。


「あの、すみませんがそれは現実に起こった事なのですか?」


いつもなら野党の質問に共感することなどめったにないが今回は同情できる、これにどう質問すれば良いのだ。


「はい、他国の調査でもほとんど同様の結論が出ております」


北朝鮮などの一部の国は米国が送った特殊部隊だとか言っているがその可能性は低いだろう、だって中世の魔法使いなんだから。


その後も長い答弁が続いたが不明な事も多く大した結論は出なかった、特筆すべき事は自衛隊の治安出動が初めて認められた事だろうか。

自衛隊が街中に展開してしばらくの間国会議事堂などの重要な建物を防衛する事になった。

まぁ中世の軍隊なんて大した敵にはならないだろう、魔法というのも少し気になるが。

いずれにせよ俺の仕事が忙しくなるのは避けられない宿命なのだろう…。





2017年7月4日

米国 NASA本部


「ハァ?第3.5惑星?」

「それ以外にどう命名するって言うんだ、こんな変な天体」

「まるで誰かが作ったみたいな軌道傾斜角だな」

「物理学の神秘ってやつじゃないか?」


俺は25年NASAに勤めてきて一番困惑している。

エンジニアと科学者による探査する場所に関する議論の中での冗談よりひどい冗談だ、しかしそれが現実のようなのだ。


「大体何だこの写真、地球の写真を加工したのか?」

「そんな事ないぞ、ハワイの天文台がこれを撮ったんだ。」

「それにしちゃあ地球に似てるだろ、あまりにも」


それは青く、大地は緑で、雲があった。

それに衛星が3個くらいある、ベスタ程度の大きさのものがだ。

リングだってある、こんな幻想的な惑星があるなら俺だって住みたい。

しかしこれがまさに幻想である可能性の方が今の所高い。


「重力は調べたのか?」

「探査機がなけりゃ分からない、それでも他の波長でも同じものが写るからこれが存在しない可能性は低いぜ」


なんてことだ、こんなものが実在するのか。


「…上層部に伝えよう、地球によく似た惑星が現れたって」

「冗談だと思われるんじゃ?」

「俺だって冗談じゃないかと疑ってるよ」


これで俺のキャリアは終わってしまうのだろうか、それとも逆に始まるのだろうか?

退勤時間にその惑星があるはずの空を見てみれば確かにそこには光の点があった、やはりあるのか…


もしかしたら、そこには生物がいるのかもしれないと思った。





2018年1月20日

種子島宇宙センター


「3、2、1、リフトオフ」

H2ロケットが空高く探査機を打ち上げる、ちなみに私は単純に航空宇宙が趣味だから見に来たのであって特に自衛隊の業務とは関係ない。

なんと新しい惑星が地球のすぐそばで発見されたと言うのだ、それにその惑星には水があり、海があり、雲がある、生命に最適な環境だし、その上地表は緑で覆われているそうだ!


だから探査機が送られようとしている。何が待っているのだろうか?

そう思っていると流れ星のようなものが見えた。

もしかしたら結局正体が分からなかったあのテロ事件の犯人はあの惑星から来たのかとも考えてしまう…疲れているのだろうか?


久しぶりに見た事だし帰ろうと思う、いつ来てもロケットエンジンの腹に響く轟音は最高だ。

空自に入った方がよかったのかなとも思う、なぜならジェットエンジンの音なら聞けるし。

船の中でトゥデイッターを見ていると、大型の火球が北海道あたりに落ちたとのニュースがあった。

火球は前のテロ事件の時にも見られたらしいし、これがそれと関係なければと願った。

しかし願いは大抵裏切られるものである。






同日

北海道 郊外


俺は夕方の農作業を終えて帰るところだった。

そこには弓を携えた中世風の人がいて、知らない言葉で俺に話しかけてきた。


「あ、あいきゃんとすぴーくいんぐりっしゅ」


言葉が通じないと分かったのか、彼は肉体言語で会話することを試みてきた。

しかしその程度の速度の拳では俺を殴ることなど叶わない。

俺はその拳を掴むとぐりっと手首をひねった。


彼は怒ったのか…ナイフを突き出そうとしてきた!

華麗なバックステップで避けたが、すると今度は弓に矢をつがえて狙ってきた!

俺はすぐさま両手を上に上げた後地面に伏せて頭を後頭部に回し、敵意が無いことを伝えた。


彼は満足げに俺を山奥に連れて行った。

そんな所には何もないはずなのに…


しかし違った。

まだ奥まで山が広がっていたのに急にクレーターが広がっていた。

こんなもの地図にもどこにもないはずだ、まさか前のニュースでやってた火球でできたのだろうか?

それにクレーターの真ん中には船のようなものが着陸しているし、そこからは何かが入っていそうな箱が運び出されていた。

村おこしには使えそうだなと思ったが、その直後に映画みたいに首をチョップされて気を失ってしまった。

俺は何をされるんだ…





2018年1月31日

同地


やはりだ、この谷で偽装工作がなされておりある地点を超えるとその中身が見えるようになっている。

ドローンでその境界を地道に確認していくと、それが円形である事にはすぐに気づけた。

それよりも重要な事は例のテロ事件の時に見られたものとよく似ている船が中央に鎮座している事だ、それにその周りには小さめの船も5隻着陸している。

船の周りには前哨基地のようなものが形成されており、一連隊程の軍勢がいる事が予測された。

それに同様の報告が各地からなされている、もしかしてこいつらは例のテロ事件と同じ連中なのでは…


と思うとドローンからの電波が途切れた、直前に火の玉のようなものが写っていたが、何にせよ発見された可能性が高いのですぐに引き返した。


この時はこいつらがあの戦争を始めるなんて思いもしていなかった。

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第一次世界間大戦 @ME_SSR

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