第一次世界間大戦

@ME_SSR

全世界同時多発襲撃事件

2017年 7月1日

東京都 千代田区


LAVから降りて訓練通り小銃を構える、誰もいない、車は車道に斜めに乗り捨てられている。

空には黒煙が昇っていて、遠くからは銃声も聞こえる。


「ただいま、ゲリラ攻撃が発生しております、直ちに安全な建物に避難してください」


警察車両が通り過ぎる、皆は逃げられたのだろうか?

分隊長について行き、皇居の大手門前に着く。

門は固く閉じられており、その前には鎧を着た人々が倒れていた…恐らく彼らが敵なのだろう。

分隊長が無線を取り出し、いつもの渋い声で、しかしいつもより小声で話し始めた。


「こちらフォックストロット、大手門前に到着、門を開けてくれ、オクレ」

「こちらクロ、門の開放は許可できない、門の前で警戒せよ」


「…仕方ない、行くぞ」


どうやら指示も混乱しているようで、事前の説明と違う場所で防衛する事になった。

LAVを皇居前まで来させてその影に隠れる、しばらくすると整然とした足音が聞こえてくる。


「こちらフォックストロット、敵歩兵部隊を確認、火力支援を要請する、オクレ」

「こちら本部、攻撃ヘリが待機している、あと3分で到着する、それまで迎撃せよ、オクルナ」


「くそったれ、アレを3分間俺達だけで?」


一応もう一分隊いるものの相手の人数に対して足りないのは明らかだった。


「もう200mもないぞ!そろそろ撃った方が良い!」


誰かがそう言うと同時に誰かが勝手に撃ち始めた。


「射撃開始!撃て!」


私も既に照準を合わせていた先頭から2番目の兵士を撃ち始めた。

彼は一瞬で倒れ、その奥の兵士も倒れた。

だがそれは彼らの被害の一部に過ぎず、LAVに載せられたミニミが彼らを蜂の巣にした。


彼らはあっけなく全滅した、これが戦争なのか。

しかし戦争とは一方的なものではなかったはずだ、後から思い返せば実際一方的ではなかった。


ビルの中から火の玉のようなものがこちら目掛けて飛んできて、直後轟音と振動が腹に響く。


「クソ!LAVに当たった!」

「撃ち返せ!」


機械的に体が動いて煙の軌跡の元に照準を合わせ射撃する、敵の姿は見えない。


「今のはなんだ!?対戦車兵器か!?」

「おい山田!無事か!?」

「えぇ、死んだかと思いましたよ」


反対側なので見えないがそこまで大きな被害は無さそうだ、しかしこんなのを生身で食らったらと思うと気分は良くない。


と思えば風を切る音がした。



「ッ!?何だ!?」


不意に横を見れば隣にいたATM手の村木が倒れていた。


「おい村木!大丈夫か!?」

「…え?あ、あぁ、弾か何かが頭を掠った気が…」


周りを見渡すと近くに矢が転がっていた。

また風を切る音がする、腕に鋭い痛みが走った、腕を見ると…

矢が刺さっていた。


「あああああああああ!!!!」

「どうし…矢!?」

「スナイパーだ!撃ち返せ!」

「どこにいるんだ!」


痛い、というよりは熱い。

銃声が鳴り響き、恐らくはまともな場所に当たっていない。

とにかく撃ち返して一方的にやられるのを防いでいる。


「痛い…」

「とりあえずLAVの中に入れ!」


分隊長がLAVの中に私を押し込んだ。


「見せてみろ…大丈夫だ!大した傷じゃない」

「けど痛いですよ…」

「だろうな、衛生隊を呼ぶから少し待て」


「こちらフォックストロット、隊員が負傷、左腕に矢を受けている、至急衛生隊を送ってくれ、オクレ」

「こちら本部、衛生隊は送れない、そこで手当てする事はできるか?オクレ」

「…こちらフォックストロット、了解」


分隊長は一瞬苦い顔をしたが、すぐにそれを苦笑いに変えて色々なものが落ちている車内から救急箱を取り出した。


「知ってるか?こういうのは抜いたらだめなんだ、出血するからな」


そう言ってナイフで矢を切ると、その上から包帯を巻いてくれた。


「腕を心臓より高く上げて待っててくれ、そのうち本部も…」

「うわあっ!!!」

車内に山田が落ちてくる。


「どうした!?」

「…」


「あそこだ!クソ!」

銃声が鳴り響き、同時に叫び声が聞こえる。


「やった!」

「よくやった!!」


「クソ!顎に刺さってる!どうすりゃいいんだ…」


「こちらフォックストロット!また隊員がやられた!頭部に被弾しており危険な状態だ!至急衛生隊を送ってくれ!」

「…こちら本部、了解、10分後に到着する。」


「10分ももつのか!?とにかく止血だ!」


そう言って分隊長は矢をナイフで切ると救急箱からガーゼを取り出し、傷口に押し当てた。


「これを自分で持っててくれ!すぐに衛生隊が来る!」


山田はガーゼを手に取り頷いた。


その後衛生隊が到着して山田は搬送され、私もそれについていって戦線を離脱した。

その後は特に何もなかったらしいが、ついに山田の顔は手術後ずいぶん歪んでしまった。

生き残れただけよかったのだろうか?


駐屯地の医務室のテレビでニュースを見ているとニュースは東京襲撃事件…いや、全世界同時多発テロ事件で持ちきりだった。

同時にニューヨークやワシントンDC、北京、モスクワ、ベルリンといった主要都市が同時に襲撃され、日本も大阪にも来ていたらしい。

証言によれば空から船のようなものが降ってきたらしいが、現在空っぽになった船の分析を進めているらしい。

私が前線に帰れるのは当分先になるだろう…


まさかこれがあの長い戦争の発端に過ぎないとは誰も思っていなかった。



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