~あとがき~

さて、王子様たちの物語はこれにて完結、ということでここから先は作者のあとがき、

制作秘話的なものになります。

楽屋裏に興味のない人はここで回れ右を推奨。












~はじまり~


まずはこれを見てくれ。


風間雅

一木央司/ケイン・ウーディア:解析の魔眼

二条桜士/リーヴェ・クロス:理解の魔眼

三崎応治/ホーク・ドラクル:直感の魔眼


君にはこれが何に見えるだろうか。そう、ただのメモ書きである。

ここから読み取れるものはキャラの名前と、うち三人が異世界人で何か特殊な能力を持っていそう、ということくらいだろう。

これで「はい、キャラ設定」と言って渡されとき君は絶句しても良いし、

A4どころかB6、あるいは情報カード一枚に収まるこのテキストを投げ捨てても良い。


だが、悲しいかな。ここまでだいたい5万字超に渡って紡がれた王子様達の物語には、これ以上の初期設定的なものは存在しないのだ。

そう。この物語は普段設定を煮込んで腐らせる私のクセを逆手に取って、

「ろくに何も決めずに勢いで書き始めたらどうなるんだろう?」

という筆者の好奇心によって完結まで持っていった物語であった。


~初期(環境)設定~


もともとこの三章に渡る物語は第一章までで完結させる予定であった。

実際第十話を見てもらえれば、「俺たちの冒険はここからだ!」エンドの気配をひしひしと感じてもらえることだろうし、なんならここでタイトル回収という最終話にありがちなネタを使ってしまっている。


だが、第十話を書いた時点で、私にはちょっとした欲が出てきていた。

「なんか行けそうな気がする~」

失礼。2022にぶっ放す鮮度のネタではないことは重々承知しているが、つい。


と、いうことでこの段階で第二章として一木、三崎の個別エピソードを書いていくことが確定した。


ちなみに「◯◯の魔眼」→「◯◯眼」の名称変更は息を吸うように行われ、

気が付いたときには先程のメモ書きの初期名称は頭の中からも消え失せていた。

確か第三章あたりで見直して「ハッ」となった記憶があるが、はっきりとはしていない。



~第二章前半~

さて、第一章で二条の成長に囲碁を利用する、というイメージはできていたのだが、

第二章、つまり一木、三崎については作者ですらもはっきりと方針を決めていなかったため、

第一章以上に書きながらつじつまを合わせていく書き方になっていった。


聡明な読者の方であれば「(あのメモ書きからなら)そりゃそうだ」と思うであろうが、

私の燃料はまだまだ十分あったので、勢い任せに新キャラを作ることにした。

なお、彦爺の設定もあのメモ書きにはなかったことは忘れてほしい。

この作者はあとがきですら勢いで書いているからだ。


と、いうわけで雅を若干「おバカ」にするため、

「賢者」から「主人公」にするために登場したキャラがひーちゃんである。

このまま雅が全員の課題を解決していく、という展開も考えたが、

それだとこの四人(+彦爺)だけで世界観が固まってしまう。

二条に対する彦爺と同様に、描写のためには各キャラ一人ずつくらいは話し相手が欲しかったのだ。


だが、ここで雅の過去を掘り下げる必要が生じたのは誤算であった。

ひーちゃんは雅の過去を知るキャラであり、この物語における「賢者」枠である。

そんなキャラと「久々に出会った」と描写してしまったことで、

それが「久々」である理由が必要となった。


そして相棒と別れるほど強烈な理由として私の頭に浮かんだんのは、こともあろうに「失恋」であった。

これが、雅が失恋を経験した(ことになった)理由である。


ひーちゃんのひとり語りだけやけに長いのも、

こうして生まれた雅に関する設定の深掘りの必要に迫られた結果であるのは言うまでもない。


~第二章後半~


さて、最大の問題は三崎、というか直感眼の鍛え方であった。


三章編成にすると決まった時点で三崎には外をぶらつかせる中で課題を見つけ、解決してもらうという方針は決まっていた。


なので、とりあえず遊ばせる、というところまで決めて書き始めることにした。

後はもう雅の気持ちになって進めた結果、カラオケに行くまでの流れが確定し、

繁華街のカラオケと言えば逆ナンもあり得るという話になり、あの物語は完成したのである。


そして最後の神様(仮)の描写こそが、第二章における最大の欠陥であった。


なぜなら。

これで行けるかなと思って書いた話を彦爺が数話後即座にひっくり返しやがったのである。

キャラが勝手に動き出す事象はよく聞く話だが、ここまでキャラを恨んだこともそうそうないだろう。


~最終章~

彦爺が神様(仮)の推測をひっくり返してからはさらに勢い任せな展開になったと記憶している。

何故なら、最終章を書くテキストファイルを作ったのが9/12。完結させたのが9/12。


……おわかりいただけるだろうか。

この作者、物語のシメという最も重要な場面をたった一日でやっつけやがったのだ。


まずは最後にかけての謎解きシーンに「管理者権限/アドミン」をどうにか絡ませることが決まった。

それと同時に神様に何らかの形で「縛り」がかかっており、解除すれば神様は文字通りの「全知全能」になることが決まった。

勢いに任せて書くと決めた時点で細かい描写は後回しにし、ひーちゃんの慧眼で万事OKにする予定が決まった。


だが、計画としてやっておきたいことはあった。それが、三人が一緒に遊ぶイベントであり、抜け駆けされた二条の描写の補完である。

流石にあのシーンだけでは二条が不憫ということで、キャンプのシーンでは彼に存分に働いてもらったつもりである。


そしてここまで書いて、作者ははたと思った。


「この作品、これ以上引き伸ばすのは無理だわ」


~最後の最後~

この時、私はいわゆる漫画の連載終了や引き伸ばしがいかに残酷なことかを悟ったような気がした。

作品を適切なタイミングで終わらせないことがこんなにも辛いことだとは思わなかったのだ。

その意味では、この王子様達の物語はここが限界点であった。


少なくとも私の目から見て、彼らにこれ以上物語で劇的に成長する余地は残されておらず。

そもそも別れの日までの描写でさらにトラブルや日常ものストーリーをおこすのも明らかな遅延行為で無粋と判断。

盛大に残り日程を端折り、最後の異世界転生シーンまで持っていったのである。


ちなみに、ビリアンの名前はビビアンとビリオンとかをかけ合わせた結果の産物だった、気がする。

ちなみに彼が死んだ後、それを正当化するための裏設定が生えたが、ここでそれを書くのは言い訳にすぎないので書かないことにする。


残りのシーンはやはり勢いで書けてしまった。

だが、ここで私はある伏線が未消化であることに向き合う必要があった。

そう。冒頭のあのシーンである。


脳内でチャラ男系と決めていた三崎。なぜ君の口調として「チャンミヤ」という呼び方を書いたのか。

私はそこを悔みつつも、なんとかかんとか冒頭の伏線回収を行ったのであった。


~おわりに~


いかがだっただろうか。私としてはこの作品が初の5万字超えるレベルの完結作品だと記憶している。

のでこの作品については「完結した!」という喜びしかない。


拙い部分もあるだろう。最後の描写を端折り過ぎという批判も甘んじて受けよう。

だが、生涯初の中編完結である。その喜びと嬉しさを全面に出して何が悪い。


9/7にファイルを作り、9/12に完結させたこの勢い任せの見切り発車作品は、私の心に大きな達成感を残して、私の手を離れていったのだ。

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「異世界王子様の憂鬱」なんて知ったことか!~日本にやってきた三人の王子と管理人の生活~ @naoyuki_sight

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