第2話 除霊師
明治はアキトを魔法陣に乗せると、魔法陣は直径二メートルほどに広がった。
「この魔法陣はどこでも好きな場所に行ける。ワープすることも空を飛んでいくこともできる。さあ、どうやって移動したい?」
「じゃあ、空で。でもいいのか?魔物ってやつは世間に公表されてないみたいだし、魔法使ってる除霊師なんて聞いたこともねえ。空飛んだりしたらばれねえか?」
「大丈夫さ。この魔法陣は空にいる間、乗り物に擬態できる優れものなんだ。まあ正確に言えば、周りからそう見えてるだけだけどね。UFOもこれ。」
そう言うと、明治は魔法陣を浮かせた。すると瞬く間に空まで飛んでいった。風を切りながら夜空を進んでいく魔法陣の上で、アキトは目を輝かせていた。
そして海面にある鳥居を通り抜けると、一本の道が現れた。道の両端には柱が立っており、柱には炎が立ち上っていた。
「見えてきた。あの魔法陣の下にある扉の向こうが目的地だ。」
扉の前で止まると、明治は魔法陣に向かって指輪をかざした。すると赤い光を放っていた魔法陣は青色に変わり、扉は開かれた。
「ここは、あの魔物を封印している部屋だよ。ロウソクの下にある石に入っている。」
ロウソクが付いた多くの石が、その部屋の中で浮いていた。
「あの石は魔封石といって、中に魔物が入っている。魔物は邪悪な魔力を放っていて、近づいた人間に憑いて具現化するんだ。例の廃病院で出てきたのがそれ。憑かないで石から出ることもできるけど、魔力が弱いから靄のまま。実体がないのと一緒だから、何もできず消滅してしまう。弱い魔封石ほど、憑くために心霊現象を起こして人を呼び寄せている。まあ魔力が強かったり、生命の数が多かったりすると、憑かなくたって具現化できたりするけどね。」
明治はロウソクの色が違う魔封石を寄せ集めた。
「このロウソクで魔物を魔封石に閉じ込めているんだ。炎の色によって、中の魔物の魔力が分けられてる。魔力が弱い方から順に、赤、黄色、青、紫って感じ。」
「なるほど。でもなんで魔物をここで封印してるんだ?除霊師なら祓っちまえばいいじゃんか。」
「すべて祓えないこともないけど、魔物について分らないこともある。だから研究のために保管しているんだ。」
アキトは納得した表情で頷いた。
「次は除霊師について話すね。除霊師は魔法使いの職業の一種だよ。そして除霊師の仕事は二つある。一つは魔物を祓う事。もう一つは魔封石を回収する事。魔封石は地球のどっかにあるんだけど、心霊スポットと呼ばれる場所によくあったりする。アキト、君には魔法使いの素質がある。」
「素質?」
「君には霊感がある。霊感ってさ、魔力を感じてるだけなんだよね。そして魔力を感じ取れるの体内に魔力がある人だけ。つまりアキトは魔法使いになれるってことさ。」
アキトは戸惑っていた。
「えっと…じゃあ俺も、空飛べたり光出したり…炎とか水とか出せたりすんのか?」
「うん。できるよ。」
明治はニコニコしながらそう言った。アキトは、少し笑みを浮かべた。
「へえ面白そうじゃん。どうやったら魔法を使えるんだ?」
「まずは自分の魔力を感じるところからやってみよう。アキトの魔力を増大させるから、魔力が分かったら教えてくれ。」
明治はアキトの下に魔力増大の魔法陣を出現させた。アキトの髪は風に揺れ、何かを感じた様子だった。
「すげえ……なんだこれ。力がみなぎってくる…不思議な感覚だ。」
「いい調子だね。じゃあ今度は火を出してみようか。手を出して、魔法陣を思い浮かべたら手の上に乗せるイメージをするんだ。」
「……って言われても、魔法陣なんか分かんねーよ。」
眉をひそめるアキト。
「ああ大丈夫大丈夫。魔法陣なんて感覚でわかるから問題ないよ。」
ニコニコしている明治を横目に、アキトは困っていた。
「あ、言い忘れてたけど、魔法陣を思い浮かべるときは魔法陣そのものを想像するんじゃないんだ。炎を出したければ炎を。水を出したければ水を想像する。だから今は火を想像して魔法陣を思い浮かべればいい。」
「それを先に言ってくれよ。」
アキトは呆れた表情を浮かべつつも、明治の指示通りに炎を想像した。アキトは目を閉じ、集中した。
「その調子だアキト。魔力が変化してきている。そのまま魔法陣を手に乗せるんだ。」
アキトの右手に、一粒の光が円状に回っていた。光は次第に手の中心に移動していき、中心で止まった後、円状に広がった。アキトの右手に赤い魔法陣が現れた。
「さあ、火を乗せるんだ。」
魔法陣から炎が立ち上る。アキトは右手から火照りを感じると、そっと目を開けた。アキトの目には炎が映り込んでいた。
「すげえな……これ。」
アキトは笑みを浮かべていた。明治は安堵し、アキトに尋ねた。
「アキト、除霊師にならないか?」
アキトは右手の魔法陣を消した。そして何かを察した様子で答えた。
「なるほど……俺を除霊師にするために、父さんは明治さんを廃病院へ呼んだってわけか。」
「そ。そゆこと~」
そう言うと、ニコニコしていた明治の表情は、真面目な表情に変わった。
(いずれにせよ君は……)
「明治さん、俺、除霊師になるよ。除霊師になって魔物を祓えばいいんだろ?」
「そんなところだ。そして君は、今日から正式に除霊師だ。それと、俺の所属する組織に招待したい。」
明治は地面に魔法陣を出した。
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