第82話 番外編① アリナタの近況報告
▷▷▷▷アリナタ◁◁◁◁
私はアリナタ。
サングラニト王国、勇者パーティーの元メンバーであり、第二王女のミーシア様の侍女だった。
私は今、王都サングラニトにあるミーシア様の墓前で跪き、両手を合わせて祈りを捧げている。
そう、両手で・・・
勇者パーティーだったころ、ミーシア様と私は一緒に行動していたアーロン様に恋するあまり、真実が目に入っていなかった。
マルティナ様が勇者パーティーを追放となり、その時点で、ミーシア様と私の未来は決まっていたのかもしれない。
ミーシア様は、暴食の悪魔と呼ばれる敵が現れた際、自身のこれまで行いを悔い改めるため、そして、民を守るため、命を失った。
「アリナタ、あなたは最高の侍女でした」
最後の瞬間、ミーシア様は瞳から涙を流しながらそう言った。
墓前にミーシア様の大好きだった『シュークリーム』と、私の淹れた紅茶を供える。
「ミーシア様が亡くなってから1年半。長かったような、短かったような・・・」
「あっ、ミーシア様。見て下さい。私の左腕、マルティナ様が魔法で治して下さったんですよ」
誰もいない墓前で、返事があるはずのない墓前で、私は一人で語りかける。
私の左腕は、マルティナ様を追放した後の勇者パーティーの活動中、ネビルアント(B)に切られて失った。
ミミとリリが住んでいたスタット村の再建を自ら名乗り出て手伝っていた時、不意にマルティナ様が回復魔法をかけてくれた。
何も言わずに、追放したことを責めることもなく、ただ笑みを浮かべながら。
「あ、あの、ありがとう・・・、ございました」
「知らなかったかもしれないけど、アリナタの淹れてくれた紅茶、好きだったんだよ。もしよかったら、また淹れてくれたら嬉しい」
マルティナ様ははにかみながらそう言った。
その瞬間、自身の愚かな行動を心から悔いた。
そして、胸の辺りが苦しくなり、鼓動が早くなるのを感じた。
「ミーシア様。マルティナ様は、とんだすけこまし野郎でございます」
私はその場に座ると、自分用に紅茶を淹れて一口啜った。
「すけこまし、と言えば、ついにマルティナ様が結婚するそうですよ」
「相手は同日まで秘密らしいです。ミーシア様は誰だと思いますか?私の予想は・・・」
候補となるのは、14人です。
ふふふ
本当にすけこましですね。
ただ、マルティナ様曰く、1人だけ選ぶそうです。
候補としては
▪️サングラニト王国 王都
1人目:冒険者ギルドの受付嬢、ミナ様。
2人目:ギルドマスターのセリア様。
ミナ様とセリア様との付き合いは長く、勇者パーティーの頃から支えられていたらしいです。
3人目:サングラニト王国の元王妃のプリリア様。
4人目:娘であり第一王女のクロエ様。
プリリア様は、あの後正式に国王様と離縁し、スタット村で復興の手伝いをしています。
クロエ様は、昔からマルティナ様の事が好きで、公務の都合をつけては頻繁に会いに行っているようです。
▪️ティーレマンス王国 王都
5人目:第三王女であり、元勇者パーティーメンバーのティエル様。
6人目:冒険者ギルドマスターのナナイロ様。
ティエル様は可能性としては低いと思いますが、故マーク様との間にできたお子様をマルティナ様の子だとずっと呟いているそうです。
ナナイロ様はマルティナ様のことをダーリンと呼び、傍目から見ても仲良しですね。
▪️リリーナ村
7人目:幼馴染のミーナ様。
今はスタット村の再建を手伝っており、幼馴染というアドバンテージを活かせるかどうかですね。
▪️アルメリア王国 王都
8人目:第一王女のミリアム様。
勇者パーティーを追放されてからは、1番長く時間を共にしているかもしれません。
誰かが言っていましたが、ヤンデレ、という症状を患っているそうです。
▪️スタット村
9人目:ミミちゃん、リリちゃんの母親であるマヤ様。
ミミちゃんとリリちゃんからママをよろしくと言われていたそうです。
マヤ様自身も乗り気で、可能性はありそうですね。
▪️魔王国•アンヘルマリア
10人目:魔王であるマリア様。
11人目:幹部No1のマーミラ様。
12人目:幹部No2のマクロス様(男)。
マリア様はマルティナ様のことを弟のように可愛がっていますが、恋愛感情はどうなのでしょうか?
マーミラ様は確実に好意を抱いていますが、遠目から見ている感じですね。
マクロス様は・・・
▪️魔王国シンプリースト
13人目:魔王であるヒミリナ様。
14人目:娘のミヒナ様。
マリア様よりは明確な恋愛感情がありそうですが、私ではヒミリナ様の気持ちは計り知れません。
ミヒナ様も好意はありますが、さすが親子というのでしょうか、ヒミリナ様同様、気持ちが読みづらくあります。
「ミーシア様は、どなたがお相手だと思いますか?」
私はそこまで墓前に語りかけると、『シュークリーム』と紅茶を下げた。
「結果が分かりましたら、また、知らせに来ますね」
私はマルティナ様に治していただいた左手で墓石に触れる。
瞳に涙が溜まるが、決して零すことなく、笑顔でその場を後にした。
2つの勇者パーティーを追放された太っちょ勇者 〜脂肪蓄積•脂肪分解スキルで敵を倒していたのに誰も見ていなかった。追放は契約書を交わしたから問題ないけど、異世界には大きな問題が発生していた〜 いそゆき @jamp0217
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