私のココロを温める星
碧月 葉
私のココロを温める星
—— 嘘でしょ……。
大きな星が流れ落ちた。
それはあまりにも突然で。
とても現実とは思えなかった。
けれど、報道機関は一斉に訃報を伝えている。
『「BUCK-TICK」櫻井敦司さん 死去 57歳』
あっちゃんが? あっちゃんが亡くなった?
いや、流れ星なんてもんじゃない。
太陽が墜落したみたいな。そんな衝撃だ。
いや、でもでもそんな筈ない。
だって、ツアーの真最中だよ。
そんな事、ある訳ない。
仕事なんかもう手に付かなくて、私は残業を諦めた。
家に帰って改めてニュースを確認する。
一体何があったの?
•
•
•
—— あっちゃん…………。
コンサート中に具合が悪くなったんだ。
1曲目の時点で体調が優れない様子で、2曲目で座り込み、3曲目終了後にはスタッフに抱えられ退場……そのまま救急搬送され、その数時間後に息を引き取ったって…………。
涙が止まらない。
生きていて欲しかった。何が何でも、生きていて欲しかった。
けれど、3曲歌い切った。
きっと猛烈な苦しさの中、歌い切ったのだろう。
最期に瞼に焼きついたのは、歌を待ち望む多くのファンの姿?
最期に鼓膜に刻まれたのは、曲を愛するファン達の歓声?
なんだか猛烈にロックで、「らしく」て、悲しさでも寂しさでもない熱いものが胸に込み上げてきて……泣けてくる。
オールブラックの服にヒールブーツで決めたシャープな立ち姿。
あの美貌。
確かにルックスも凄まじく、神がかった美しさだなと思う。
でも、あっちゃんといえばやはり歌。
艶やかでどこまでも深い歌声。
重くダークなロックから、開放的なポップ、透き通るようなバラードまで、多彩……多彩過ぎるBUCK-TICKの楽曲の、あの世界観を余す事なく表現する歌唱力。
そして歌詞。
分かりやすい詩ではないとと思う。
美しく、時に激しいけれど、捉えどころが無いというか。
「わ、私の解釈合ってる?」なんて思うけれど「それはそれでいいんだよ」と言ってくれているような、包み込んでくれるような度量がある歌。
唯一無二の歌声。
あっちゃんの歌が好き。
私のまわりでBUCK-TICKが好きという人は少ない。
というか、かなりレア。
「まだやっていたの?」なんて言う人すらいるくらいだ。
1987年にメジャーデビューしたBUCK-TICKは、メンバー変更も休止も無く、常に進化を続け、新曲を作り続け、ライブをやり続けてきた。
そんなバンドって、とても数が少ないんじゃないかなと思う。
私が今、繰り返し聴いているのが、今年3月にリリースされた『太陽とイカロス』という曲だ。
曲調は明るくポップ。
けれど歌詞をよく聴くとハッとする。世界のニュースと重ね合わせて胸が痛くなる。
悲しくも美しく、それでいて優しい歌。
もし、昔のBUCK-TICKしか知らないという方、そもそも存在を知らなかったという方にはちょっと聴いて欲しいなと思う。
今改めて、この歌を聴くとあっちゃんと重ねてしまう。
「あなたは鳥に? 風に? ダメ、やっぱり悲しいよ……」
なんて想いが湧いてきて、涙が、それこそ「ボロボロ」零れる。
大きな、大きな星は流れ落ちてしまった。
でも、遺してくれた歌は、勇気や癒し、前に進むための色んな力をくれる……これからも。
星のカケラは私に胸のポケットに、しっかりしまったよ。
私のココロを温める星 碧月 葉 @momobeko
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます