そのあと


 無事に握手会が終わったあと、外で待ち合わせをして、俺は晶と会っていた。

 顔を合わせるなり、晶が聞いてくる。


 「で、どうだったん、握手会」

 「うまくいったよ。いろいろありがとな」


 ゆーちゃんとの握手は上手いこといったし、緊張もほどほどに会話も出来た。それになにより、勃起しなかったのが大きい。

 俺が照れ混じりに言うと、晶に頭をわしわしされた。


 「っおい! やめろよ」

 「頑張ったご褒美だ、ほれほれ~」

 「……っ」

 「なに、されるがままになってんの。いつもみたく振り払えよ」

 

 晶に言われて気づかされた。そういや俺、この状況を楽しんでる。わしわしされてるのに、イヤなはずなのに、心の中では嬉しいとか思ってしまっている。

 それはきっと、俺が彼女のことを……。


 「晶っ、俺……お前のこと……――っ!」

 

 その先を言おうとして、口元に触れるものがあった。


 晶の指先が、俺の口を塞いでいたのだ。

 彼女は少し寂しそうな顔で、笑った。


 「そういうのは、ちゃんとした女の子に取っとくもんだぜ」

 「……っ」

 「じゃ、花の握手会の成功もかねて、ぱぱーっと豪遊しちゃうか」

 

 指先を離し、いつもの感じで晶が話している。

 ……もしかしたらだけど、彼女はこの、心地いい関係が壊れるかもって、感じてるのかもしれない。

 それでも俺は、諦めたくない。男らしく、攻めたい。

 

 今度はお願いとか卑怯な手を使うんじゃなくて、ありのままの俺で、晶に振り向いてもらえるようにするんだ。


 「なにしてんだ、行くぞー?」

 「あ、待ってくれよ!」


 俺は小さく決意を固めて、晶の隣に駆け寄っていった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

女慣れするため、仲のいい男っぽい女友達に○○お願いしてみた みゃあ @m-zhu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ