賭ける二人のその先は?

紫陽花の花びら

第1話

「あのさ、そこまで優しくする?

幾ら教科書借りたからって、ノートまとめる? 私にも為たことないじゃん!」

「んな事で怒るなよ。して欲しいっていわれたからさ、為たんだよ。駄目かな?」

私は呆れて口あんぐりだっ。

「口開いてるよ、四季?それも可愛いけど」

「そんなで騙されないから!」

でも、そこが大好きっ。

 十二年前中三の私たちは、いつもこんな感じだった。

 まあ、春斗は腹が立つぐらい、誰にでも優しすぎて、それで喧嘩になる。

 私森野四季と鏡春斗は付き合っているのだ。

 高校は別々になってしまったが、そのまま付き合っている。それが当たり前だとお互いに思っていたから。

 高校にも慣れてきたある日、暫くぶりのデートでウキウキ為ていた私。

「お~元気?」

「うん!春は?」

「元気だよ!逢いたかった!」 

うひょーそんなこと面と向かって言われたら、赤面為てしまう。

 私たちは手を繋ぎ、表参道を歩いている。

「お腹空かない?」

春斗は笑いながら頷く。

「もう~食いしん坊って思ってるんだよね」

「良いさ。食べてる時の四季、可愛いから好きだよ」

なんか熱くなるこの辺が、この胸の辺りがさ。

春斗が好きって想いが溢れてくる。

 私たちは、可愛いカフェに入った。

お互いに日替わりランチを頼んで、学校の話しを為ていた、その時、

「じゃぁ賭しよ。お前が後二か月で3㎏痩せなかったら、水着買ってあげない」

「はあ? 3㎏位あっという間!」

「もし痩せたら……水着2着ね」

「バァカ、できねぇよ」

「じゃあ、ここにサインして」

紙ナプキンにサイン為るのを見て、私たちは思わず笑ってしまった。

「面白い賭ね」

「うん、男の人はダイエット頑張らせたいんだな」

「へぇ、そう」

「そうだよ……俺は判る」

春斗はボソッと

「俺もやりたい。四季と賭けを」

「どんな賭け?」

「えっと……あのな、親の転勤でブラジルに行く事になった」

「えっ?……はあ?……いつ……」

「夏休み前……」

「嘘……嘘……嫌だ……駄目……駄目」

涙が零れてくる。

頰が生暖かいよ。

「ごめんな、なかなか言えなくて。残りたいって親と喧嘩為たんだよ。でも駄目だった」

「何年?」

「五年」

私たちは食事もそこそこに店を出ると、当てもなく歩いていた。

春斗は肩を抱いてくれている。

「四季、好きだ。どうしようも無い位好きだ。」

「春!春!好き……」

 私たちは約二カ月、ほぼ毎日のように逢った。

 そしていよいよ旅立ちの日が、

「じゃあ、賭のこと忘れるなよ」

「春こそ、忘れないでよ!」

春斗は私を引き寄せ、強く抱き締め、唇を優しく優しく合わせてくれた。

号泣する私を気にしながら出発ロビーへと春斗は消えて行った。

 

私たちの賭と題されたノートの中身は

「メールは月に一回 電話はしない。付き合あった記念日四月二十日 春斗誕生日六月十六日 四季誕生日九月九日 クリスマスはカードを送る。プレゼントはなし。心を込めて書く。その返事はちゃんとする事。心を込めて書く」

本当沢山話し合った結果、辿りた私たちの賭け。

この約束が苦しくなったり、守れなくなったら、正直に話して友達に戻る。

「これが出来なくなるのは、想いが無くなってくる事。逢えないから、寂しいから、だから他に好きな人が出来たは、立派な理由だからね。お互いに嘘をつき始めたら辛いだけだよ。言われた方は辛いけど、でも嘘だと判った時の方が、多分何百倍も悲しいよ。どう?」

「判った……判った……」

きっと、わたしの為だよね。

寂しがり屋で、泣き虫の私が、もし誰かに優しくされて、心が動いたとき……そう考え方てくれたんだね。

「春……泣きたい時電話して良い?」 

「でもそれだと、毎日にならない?」

「為らないから……どうしても涙が止まらなくなったら」

「良いよ……我慢できなくなったら為ておいで」

決まった回数より多く連絡した方が負け。

勝った方の言う事をひとつ必ず聞く。

「どんな事でもだよ?良い?」

「春は大丈夫かな?」

私は駄目。今だって涙が止まらないよ!ああ~ああ~春斗……好きなのに!行かないで……嫌だ。

 確かにギリギリの五年だった。

でも、頑張れたよ! 回数は五回オーバーしたけど。

 到着ロビーには満面の笑みで迎えてくれる四季がいた。

「お帰り!春……」

「四……季……逢いたかった……」

号泣為たのは俺だった。

「俺……俺……」

「春……の負けだね」 

「うん……情け無いけど。何でも言ってよ。」

「ここで?」

私は空港傍のホテルを取っていた。

「改めて!おかえりなさい。春」

抱き合う私たち。

耳元で囁くの……

「結婚為てね」

「勿論……俺で良いの?」

「うん……泣き虫春が大好きなの」


結婚して三年、今日の賭は?

いざ……勝負!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

賭ける二人のその先は? 紫陽花の花びら @hina311311

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ