第9話 指紋
俺は警察に相談に行った。妻を逮捕してくださいと頼んだ。
警察はなぜか俺に指紋を採取したいと言い出した。
俺は素直に従った。警察の心証を悪くしたくなかったからだ。
***
日本の警察は優秀だ。
それだけは間違いない。
俺が探していた失われたパズルのピースがすべてそろったからだ。
いつの間にか1枚の絵になっていた。
俺は20件の空き巣・強盗と5件の殺人事件の犯人だった。
現場に俺の指紋と体液が残されていたそうだ。
なぜ、そんな風になったのかはわからない。
俺は全く覚えていない。
被害者はみな金持ちで、俺は強盗をやって、その家の人を殺したようだ。
俺以外の指紋は見つからなかった。
俺は一人でやったんだろうか?
中には一人では絶対無理というような量の貴金属やブランド品が盗まれたケースもあった。
俺は何も覚えていない。
現在は正気だ。
なぜ、いきなり正気に戻ったのかはわからない。
そういえば、俺に生活費を振り込んでくれていたのは、妻だった。
妻にはすでに男がいて、俺が素性を隠して住んでてくれたら、助けてあげると言っていた。俺はあまりに組織のノルマが過酷なので、一度組織から逃げようとしたらしい。それで、自宅のマンションに帰っていたんだ。
そこには、妻子が新しい男と住んでいた。
その後、俺は足立区のボロアパートで潜伏生活をしていたようだ。
その頃は精神が破綻していて、過去のことが分からなくなっていた。
それを、あの2人はラッキーだと思ったのか、妻は俺をまったく訪ねて来なかった。
それに、免許証は偽造だった。
妻が取引した闇社会の人間はすでに死亡していて、俺が足立区の前にどこにいて、どんな生活を送っていたかはわからなかった。しかし、確実に言えるのは、俺が強盗を何件もやって、5人の人を殺害したということだけだ。
いつの間にか犯罪者になっていた。
もう、俺にはもう誰もいない。
ただ、阪木君だけが面会に来てくれる。
彼が俺にいろいろ聞いてくる。
小説にしたいそうだ。
遁走 連喜 @toushikibu
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます