第8話 暴かれる過去

 俺はマリカ♡にも会いに行った。会ってみると、明るく、気さくなヤンキー風の子だった。彼女によると、もう5年くらい前から通ってあげていたらしい。


「俺、自分のこと何か話してなかった?」

「うん・・・普段は歌舞伎町にいるけど、俺は大塚が好きだって言ってたよ」

「何で?」

「場末感がいいって」

「失礼だなぁ」

「でしょ」

「あとは何か覚えてることない?」

「あ、そうだ。奥さんに売られたって言ってた。売られてやばいことをやらされてるって。でも、君を巻き込むことは絶対ないからって言ってた」

「やばいことって何だと思う?」

「薬とかかなぁ」

「俺もやってたのかなぁ・・・」

「そんな感じじゃなかったよ。やってる人ってけっこうわかるし」

「そうなんだ」

「やってる人って、挙動不審だよ。けっこうわかる。今も禁断症状ないんでしょ?」

「うん」

 話してるとやっぱり感じのいい子だ。お気に入りだったのもわかる。

「俺って他の風俗にも行ってたのかな?」

「ピンサロが好きだって言ってたよ。安いし。いつも金はないって言ってた。でも、時々シャネルとかくれるんだよね。新品じゃなかったけど。質流れって言ってたよ」

「もしかして盗品なんじゃないかな?」

「うーん。なんだろうね。私も怖いから売ったりとかしないで持ってるよ。ほら、売って盗品だったら警察に捕まっちゃう」


 俺は窃盗団の一員だったのかもしれない。

 でも、覚えてない。


 俺は脅迫されて窃盗の片棒を担がされていたんだろうか。

 こんな身の上で警察に行ったとして、俺が捕まることもあるんだろうか?

 過去を追求することが怖くなってきた。


「阪木君。僕、怖いんだよね。過去に何してたか知るのが」

「まさか、人殺しとかしてないですよね?」

 彼はにっと笑った。その表情を見て、彼が今まで興味本位で俺に付きまとっていたことに気が付いた。

「そんな映画みたいな展開はないと思う。ごめんね」

 俺は謝っておいた。せいぜい、強盗くらいだろう。それでも十分重い罪だが、彼には物足りないだろう。


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