-エピローグ-

「黒井 凪さんの小説が大賞を受賞されました。

また、その小説は…」

そんな1つのニュースで目が覚める。

やれやれとため息をつき、起き上がると、

隣の部屋で寝ている彼女を起こす

「全く、白咲くん…君は相変わらずだな…

朝ごはん食べるかい?」


眠そうにしながらも、目を覚ます杏

「あ!凪さん、おはようございます!

後、その呼び方やめてください、

一緒に暮らしてるじゃないですか♪」


自分が昔の癖で呼んでしまっていた事を

謝ると席に着いた。すると、杏が思わず

テレビの方を指差す。

「あ、これって凪さんの小説ですよね!

これで念願の小説家デビュー!

といった感じですか?」


期待の眼差しを向ける杏に凪は、

少し、恥ずかしそうにしながらも

「あぁ、そうだ。少しばかり、遅過ぎた

スタートかもしれないが、これも君のおかげだ」


そう言いながら珈琲を啜る凪、

そんな中テレビの声がアトリエに響き渡る。


「いやぁ、僕は黒井君が絵を描いている時

から見てきたが、この作品は本当に凄いね。

これまでの彼の作品は雲の上の存在の様な

物ばかりだったけど、今回は少しばかり

違うね。簡単に言うなら″暖かみ″がある。

そんな作品だったよ」


その声を聞いて、杏が自慢げに

「勿論、私の協力のおかげですよね♪

優秀なアシスタントに感謝してください♪」

頭を撫でてくれと言わんばかりに、

頭を差し出す杏に、少し苛立ちを感じ、

黒井が思わず額を指で弾く、


「全く。僕ァ…君に感謝しているのは

間違いない。が、少なくともアシスタント

として、貢献した事はないだろう。

それに、今はアシスタント

なんてものよりもっと、大切な存在なんだ。

これからも宜しく頼むよ」

素っ気ない素振りを見せる凪、

杏が額を抑えながらも立ち上がる。


「凪さんは昔から変わりませんよね!

たまには私の事を素直に褒めたって、

良いじゃないですか!」

怒る杏をなだめるようにそっとキスをし

部屋に帰ろうとする凪、


あまりに急な出来事に頭の中が真っ白になり、

思わず声を出す

「あの!小説の題名は?」

そう言って問いかける杏、

黒井は振り返り

「″二人だけのアトリエ″」

そう言うと部屋に戻るのであった。

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「二人だけのアトリエ」 N @Noa39

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