クラースナヤ・クラスト

　母は去った。自分を置いて。残されたのは多額の負債と機械の相棒。
　
ティオノール・バルカは自分が不幸だとは思っていない。16歳にして学校にも行かず母親の借金を返すため、労働にいそしむさまは客観的に見れば不幸かもしれない。しかし、母の残した人型兵器 H.L《ヘッドレス》は優秀な工作機械でもあり、建築ブームに沸く国際都市【コレント】において仕事は山のようにあった。そうして、贅沢はできないながらも平穏に借金返済の日々を送っていた。
　
　そんな忙しいながらも穏やかな日々に小さな変化が訪れた。
　幼少期を共に過ごした少女、ソーネチカ・ハミルトンが帰ってきたのだ。3年ぶりに再会した一つ年上の幼なじみは別人のように綺麗で、自立した【女性】になっていた。昔と変わらない笑顔を向けてくれる彼女にわずかな気後…続きを読む