28 テロリスト再び

 ある日みなは、帰宅する帰り道、怪しげな男を見かけた。

 サングラスにマスク、帽子までかぶって顔を隠し、アタッシュケースを持ってキョロキョロと辺りを見回している。

 見るからに怪しい、怪しすぎる。


 近くに高校があった。部活帰りの高校生が通りかかったが、怪しい男はそれをやり過ごした。みなは、その男が何をしでかそうとしているのか、ドキドキしながら遠巻きに見ていた。


 そしてそれをまた、ちょっと離れたところで横山が見ていた。確かあれは、成瀬の会社に来ていたOLだなと思いつつ、その視線の先を見てみると、見るからに挙動不審な男。


 横山は、その男を知っていた。テロリストだ。持っているのは、おそらく爆発物。厄介なところに出くわしてしまった。知らぬふりをして行ってしまおうとも思ったが、あの女性が被害に遭うのを見過ごしたら、成瀬に叱責されるかもしれない。


 面倒なことになったな、と思いつつ、仕方なく横山は、みなに近づいていった。

「危ないから離れて」

 声をかけると、みなはびっくりしていた。

「おい、お前」次に横山は、テロリストに向かって言った。「こんな所でのはやめろ」


 テロリストは驚いて横山を見ると、

「あっ、お前、探したぞ」テロリストは、横山に向かって歩いてきた。「なんで約束を守らないんだ」

 そうだった。昨日、爆発物を運んでくる約束だった。ますます面倒なことになってしまった。


「とにかく、ここではやめてくれ」

 この会話は、禁じられた『テロリストとの接触』になるのだろうか? こんな言い方では、そうとも受け取られかねない。

「うるさい! 俺はやるぞ!」

 テロリストは、突然アタッシュケースを横山に向かって投げつけた。

 横山は素速くアンドロイドのレンを出し、『クラウド』の入り口を出現させて、アタッシュケースを吸い込んだ。


 それを見たテロリストは、何が起こったのか理解できず、ポカーンとしていたが、失敗したのを理解すると、一目散に逃げて行った。


「あの」

 横山がレンを球形の異空間に戻すと、後ろにいたみなが言った。

「今のは何ですか?」

「あいつはテロリストで、爆発物を投げてきたので、『クラウド』に放り込んだんだ。もう大丈夫だ」

「いえ・・・あの大きいロボットみたいなのは、何ですか?」

「あれ? 成瀬ってやつから聞いてないの? 俺たちがエイリ・・・」

 言いかけて、横山は気がついた。まずった、秘密にしてたのか。横山は額に手の平を当ててうつむいた。


「あなたはどういう方なんですか? もしかして、ひかるが言ってた宇宙人って、あなたのことなんですか?」

「いや、それは俺じゃないと思う」

 あれ? またまずいことを言っちゃったか?


 しかし、みなは微笑んでいた。

「なんかすごいメカを使って、私を助けてくれたんですね。どうもありがとうございました」

そう言ってみなは、横山に頭を下げた。

「いや、なに・・・それじゃ、俺はこれで・・・」

 横山がそそくさと立ち去ろうとすると、

「連絡先を教えてくれませんか? 今度、お礼をさせてください」

「いや、あの、今スマホを持ってないので・・・」

「じゃあ、またあの会社に行ったら会えますか?」

「ああ、たまには立ち寄るかも・・・」

 適当にごまかして、横山は去った。


 みなは、その後ろ姿を見つめながら、ボーっとしていた。



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