21 決意

 屋敷の隣の倉庫についた成瀬は、シャッターを開けて、二人を中へ案内した。

 メン・イン・ブラック? の一人がスペース・シップの周囲を歩いてみて言った。

「やはりそうだ、この型のスペース・シップなら、積載しているバッテリーで適合します。ただ、動力がダウンしているとなると、手動で交換する必要がありますね」


 その男は一旦倉庫の外へ出て、空を見上げ、何やら手で合図を送った。

 すると、目の前の地面に、金属製と思われる箱と、見慣れぬ器具が現れた。その男はそれを持って、スペース・シップの周りを歩き、わずかな印を見つけると、そこに器具を押しつけた。


 そこからすうっと、引き出しのように船体の一部が出てきた。そこに入っていた箱形の金属を、新しい箱と交換して押し込むと、スペース・シップは、ポウッと淡い光に包まれた。


「おはよう、『アイコン』」

 成瀬が言うと、

「おはよう。私は生き返ったのか?」

とスペース・シップが話したので、ひかるはびっくりした。彼女は、スペース・シップが会話型のAIを搭載していることを知らなかったので、無理もない。


「兵器は、近々用意して送ります。今日のところは、これでよろしいですか?」

 メン・イン・ブラック?の一人が言ったので(いつも話をするのは彼の方で、もう一人は無口だ)、成瀬はちょっと考えてから、

「あと一つだけ。本国に伝えてほしい」と切り出した。「私は先日、ここにいる彼女、成瀬=蒼井ひかるさんと結婚した」

急な話で、ひかるはびくっとした。


「本国でも、正式に手続きを取ってもらいたい」

 ひかるは、慌ててメン・イン・ブラック? たちに頭を下げた。

「そうでしたか。了解しました。それでは私たちはこれで失礼します」

 そうして二人は、空間転送でスーッと消えていった。



「悠さん、帰ってしまうのかと思いましたよ」

 ひかるは、成瀬の肩にもたれかかって言った。

「しばらくは日本にいてくれるんですよね?」

「あれっ?」彼は、意外そうに言った。「ずっと一緒って言ってなかったっけ?」

「だって、後継者が育つまでって・・・」

「そんなニュアンスで言ったつもりはないんだけどな」と、彼は笑いながら、「俺は、死ぬまでこの星で君と一緒に暮らすつもりだよ」

 ひかるは、嬉しさのあまり彼に抱きついた。



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